フォト
2016年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

« 2009年11月 | トップページ | 2010年3月 »

2010年2月

2010年2月22日 (月)

またもやリンチの関連本のハナシ……なんだけど、なんだ、こりゃ?

えー、リンチの新しい関連本の案内メールが米Amazonから届きまして、要するに「アンタ、以前に『Airs on Fire』とか買ったっしょ? こんな本もあるんだけど、買う?(てか、買え)」(大幅に意訳)とゆーヤツですね。

Alphascript 今回オススメいただいたのは(笑)、「David Lynch: Film director, Visual arts, Academy Award, Academy Award for Best Director, The Elephant Man (film), Blue Velvet (film), Mulholland Drive ... Festival, Venice Film Festival, Surrealism」というクソ長たらしいっつーか、早口言葉みたいっつーか、寿限無っつーかなタイトルの本なのだけど、これがまた192ページで$78とエラク値段が高い。

いや、まあ、学術書だとこの値段もあるかなあ……と思いつつ、念のために幾ばくかでも内容を知りたくて出版元であるAlphascript Publishingの公式サイトをみてみたら……あらあらあら(笑)。

要するに、この出版社、Wikipediaの記事をそのまんま使って本を出すという商売をしているところなんでありますね。とりあえずこれがわかった時点で、大山崎は購入しないことに決定。「全部web経由でタダで読めるんじゃん」というのはともかく、内容に関する正確性の問題から「校閲等の典拠として、Wikipediaの記述は使わない(使えない)」というのは、出版に関わる者なら常識なんであります。

で、この時点で、大山崎の関心は、本ではなくてAlphascript Publishingという出版社そのものに完全移行(笑)。いろんなショーバイを思いつくなあ、でもこれって違法性はないのかなあ? と思ってネットの海を漂ってみたら、まずAlphascript Publishingのサイトに、英新聞Guardianに掲載された記者会見の記事があるのをみっけ。

「Alphascript Publishingが出す本は、すべてWikipediaの記事をもとにしているのか?」という質問には「イエス」。「だとしたら、なんか断り書きがあってもいいんじゃないスか?」という質問には、「じゃあ、他社の本も『この本には馬鹿げたことが書かれています(Attention! Book contains nonsense!)』とか『この本には性的な話しか書かれていません(Attention! Book has only sex-scenario!)』とか断らなきゃならないのか?」と完全に開き直ってます……が、米Amazonに掲載されているリンチ本の表紙写真をみた限りでは「High Quality Content by WIKIPEDIA articles!」と書かれておりますね。やっぱ、読者からクレームが相次いで、初志貫徹は難しかったんでしょうか。

いうまでもなく、記者会見でも「読者から文句がきたらどーすんの?」と突っ込まれてるわけですが、それには「もちろんネット経由で全部タダで読めるわけだが、特定の題材に関しては書籍の形で買っておきたいこともある。状況にもよるが、記述追加もできない去年出た本を買うのではなく、Alphascript Publishingの本を買えば最新の情報が手に入るのだから。我々が生きている時代は、時間の流れが早いのだ」とか答えてます……いや、にしても、どういう「状況による」んだかどうにも考えつかないんですけんども、ネットはおろか電気もない絶海の孤島に行く方とか、「PC使っちゃいけない教の信者」とかの、完全デジタル・デバイドな方むけなんですかね?

「これは、書籍の形態をとったインターネットなのだ」ともおっしゃってますが、うーん、正直なところ、大山崎には「情報の不正確性」というネット・ベースのデメリットと、「出版スピードの遅延」「流通コストの発生」という紙ベースのデメリットの両方を兼ね備えたビジネス・モデルにしかみえませんが、さて、どーしたもんでしょう(笑)。

次いで、Alphascript Publishingの親会社であるVDM groupのサイトには、CEOであるPhilipp Muller氏に対するインタビューがみつかりました(現在は削除されているようで、Googleの「クィックビュー」からしか読めません)。「Alphascript Publishingが、Wikipediaの記述を無断で書籍化することについての合法性」を問われたMuller氏は、以下のように答えています。「同じ質問をGoogleにもしたのか? 彼らは何年にもわたって、著作権に守られた著作物をスキャンしてきた。そして、Googleは著者や出版社の許可なしにそれらの書籍を売っている。これは違法であるばかりではなく、剽窃だ。で、まさに彼らはトラブルに巻き込まれようとしているわけだ。AlphascriptとFastBookはそれとまったく異なり、最初から出版することが可能な著作物を本にしている。インターネット上にはいわゆる『コピーレフト(copyleft)』の著作物があって、誰もが自由に利用できる。ということは、明らかにそれを商用利用する許可も与えられているわけだ。我々が行っているのは、まさにそれなのだ。これまでになかったことではあるかもしれないが、合法だ」

この主張が、Wikipediaが採用している「GFDL(GNU Free Documentation License)」の条件に適合しているのかどうか、ちょっとにわかには判断がつきません。確かにGFDLでは基本的に商用利用も認められています。が、それは「当該領域の学術的発展」や「知的情報の共有」を前提にした話であるはずです。さて、Alphascript Publishingのケースが本当にそれに該当するのかどうか。

それはそうと、Alphascript Publishingの会社所在地はモーリシャス共和国なんすね。おそらく人件費の安いアフリカで製作の実作業を行っているんだと思いますが、それにしちゃ、このお値段はどーゆーことだ?(笑) ネット上ではもちろん「いいのか、これ?」という質問や議論も発生している様子です。あの長ったらしい書名は、「インターネット検索で引っ掛かりやすいようにしているのだ」という説もありますが、むしろ今回のメールのように、「Amazon等の『リコメンド・システム』に引っ掛かりやすいように」という手法であるのかもしれません。で、その企業努力の成果として(笑)、米Amazonや日Amazonだけではなく、日本の某書店のサイトで検索しても大量にAlphascript Publishing社刊行の本が引っ掛かってきますね(まったく引っ掛からない書店サイトもありますが、意識的にAlphascript Publishing社の本を排除しているのかどうかはわかりません)。うーん……昨今巷でかびすましい「電子書籍」への流れを考えたとき、なんかヤバいものを感じるのは大山崎だけでしょーか?

笑えたのは、元祖Wikipediaにある「Alphascript Publishing」の項目で、「グルジア(Georgia)共和国」に関する本のカバーに「アメリカ合衆国ジョージア(Georgia)州」の写真が使われている本とか、アメリカン・フットボールのチームに関する本のカバーに「サッカー選手」の写真が使われている本とかの例が記載されています。まあ、この、Wikipediaの記事を書いている著作者側がAlphascript Publishingに対してどのよーな感情をもっているかは想像が付くし、現物を見ていないんでナントモなんですが、なーんか「校正やら校閲やら、一切されていないのかも」という危惧を抱くのは大山崎だけでしょうか。いや、あるいは「爆笑本」としてはすっごく優秀なのかもしれませんが(笑)、騙されたと思って試しに買うにはこの値段はちょっと。10ドルぐらいなら話のタネに買っちゃうのになあ、惜しいなあ(笑)。

今回のリンチ関連本に関しても、リンチ本人や映画会社を含めた関係各所になーんもアプルーバルをとっていないことは、容易に想像がつきます。ってえことは、当然ながら本人の写真や映画のスチルを含めた図版類は一切ないんでしょうね。ならば、いっそカバーにヴァージニア州リンチバーグ(Lynchburg)の風景写真なんか使っていただけてたら一層おシャレだったんですが、実際はご覧のようなの感じで、これまた非常に惜しいところであります(笑)。

Crimzontide PS. カバー、みっけ(笑)。 アラバマ大学のアメフト・チーム「クリムゾンタイド」の本なのに、躊躇なくサッカー・ボールをば蹴飛ばしとりますなあ(笑)。写真使用の許可がとれなかったんだろうけど、いくらなんでもこれはないんではないだろーか。大学関係者や同校出身者は怒ってるかも。

2010年2月21日 (日)

「David Lynch: Interviews」を読む (1)

Lynch_interviews_3 というわけで、やっとこさでRichard A. Barney編「David Lynch: Interviews」を読了。

内容としては、「イレイザーヘッド」から「インランド・エンパイア」まで、デイヴィッド・リンチの映画作品に関連するインタビューを作品順に24本、まるごと再録するという構成になっております。

以前刊行されたHelen Donlon編のリンチ発言集「According to... David Lynch」はあまりに断片的であり、編者の恣意的なテーマ分けがされていることもあって、ちょっと資料として使いにくい面がありました。また、クリス・ロドリーのロング・インタビュー本「リンチ・オン・リンチ」は、狭い範囲の時点におけるリンチの考えが反映されたものであったといえます。それらに対し本書は、前後の文脈からリンチの意図を確認しつつ発言を読める点、そして1977年から2008年にかけたリンチの考えの変遷(あるいは不変化)を確認できる点において、先行する類書にはない特長を備えているといえます。。当然ながらインタビュアーはそれぞれ異なっており、多様な立場や考えからのアプローチがみられる点でも興味深い点です……逆にいうと、形式や視点における統一性には欠けているわけですが。

いずれにせよ、リンチに関する基礎資料として、本書が現在もっとも重要なもののひとつであることは間違いありません。事実、「Beautiful Dark」でGreg Olson氏が引用していたリンチ発言の多くが本書には収録されており、氏が述べている作品分析等を理解/検討するうえで非常に有用です。いうまでもなく、自分なりのリンチ理解を構築するうえでも、本書は必須資料といえます。

全体的な印象をざらっと述べると、まず感じたのは「リンチに対するインタビュー」そのものの質的変化です。これには二方向からの意味合いがあって、まずひとつはリンチの「インタビューを受けるという行為」そのものに対する考えの変遷があること。「イレイザーヘッド」のころは「何かについてしゃべる行為」の意味そのものが理解できなかった……という趣旨のことを自身で告白しています。そりゃ、インタビューとして成立しませんわな(笑)。その一方で、年代が下って作品数が増えるにつれて、(もちろん全員ではないですが)インタビュアー側のリンチ作品に対する理解が深化している面もあるようです。結果として、後半になればなるほど(具体的にいうと「マルホランド・ドライブ」のころから)、リンチとインタビュアーの話が次第に噛みあってきており、「作品論」的な遣り取りが増える傾向がみられます。

逆にいうと、「イレイザーヘッド」「エレファント・マン」「デューン」あたりのインタビューは、デイヴィッド・リンチという「新人映画監督」の紹介にウエイトが置かれている感じです。もちろん、その時点では適切な方法論であったと思うのですが、現時点で読み返すとすでに知っていることばかりであるのも確かです。そんななかで、「Movie Maker」誌が行った「エレファント・マン」に関するインタビューは、撮影監督であるフレディ・フランシスによる具体的な撮影技法の話も収録されており、技術論として興味深い点で異色でした。

個人的にもっとも詰まらなかったのが「ツイン・ピークス 劇場版」のころのインタビューです。あるいは、この作品に関するインタビューの低質さは、そのまま当時の「ツイン・ピークス 劇場版」に対する評価の低さの反映であるかもしれません……他に収録されたものより優れたインタビューが存在しないという意味で。ただし、この頃の体験が「他者の評価を気にしない/見ない」というリンチの姿勢を形作ったのならば、その後の「インタビューに対する姿勢の変化」につながっているとも受け取れます。先に述べた”「リンチに対するインタビュー」そのものの質的変化”という観点に立つなら、この「低質なインタビュー」自体が「その変遷を測る指標」といえなくもないのではないでしょうか。

てなことで概論的なことは終わりにして、次回からはリンチの発言で興味深かったものをピック・アップする形で紹介を続けたいと思います。

(続く)

2010年2月 3日 (水)

またもやリンチ関連本のおハナシ

えー、チンタラとデイヴィッド・リンチのインタビュー集を読み進めているわけですが、まだそれが読み終わらないってーのに、またもや新しいリンチ関連本が刊行されるという情報が。

Film_painting_3 The Film Paintings of David Lynch: Challenging Film Theory」という文字どおり挑戦的なタイトルの本でありまして(笑)、すでに米Amazonnでは予約開始中。現在のところの刊行予定日は5月15日。出版社が、なぜか米アマゾンではIntellect Ltd というイギリスの会社になっている一方、英AmazonではChicago University Pressになっているという、いわば英米クロス・カウンター状態なんですが(笑)、さて、どーゆー機序でそうなっているのかはまったく理解の彼方であります。

で、この本の趣向でありますが、説明文を読む限りでは、どーやらリンチの映画作品を他のファイン・アート群との関連性において論じようという試みであるよーです。そもそもリンチが画家を目指していて、映像作品を作り始めたのは「時間経過とともに動く絵」を作りたかったからだ……というのは有名な話でありますが、著者のAllister Mactaggart氏が主張するに「これまでのリンチに関する研究は、他の芸術形態との関連性を等閑視してきた」そうであります。うーん、そっかなあ? いわく「リンチ作品を映画理論や美術史、精神分析や映画と刺激的かつ斬新に関連づけつつ、映画監督としてのリンチに関する新しい視点を提示する」云々……おお、すげえアタマ痛そうだ(笑)。

Allister Mactaggart氏は、チェスターフィールド大その他で映画学と美術史の講師をやってらっさって、どーやら主にリンチを研究対象にしておられる方らしい。2006年には「Surface Attraction: Hyphological Encounters with the Films of David Lynch」とゆー論文を上梓、専門に映像文化と並んで精神分析も入ってるという……うう、やっぱり、アタマ痛そうだなあ(笑)。

なんか「挑戦」されているのはコチラのよーな気もしますが(笑)、ま、読後の感想はあまり期待しないで期待しといてくだちい(笑)。

余談でありますが、Steven Dillon氏による「Sollaris Effect」とゆー本を読んでおりましたら、フランスにおけるリンチ作品の評価状況(というか、90年代頭からの「カイエ・デュ・シネマ」方面におけるリンチ評価の変遷)が述べられていて、たいへん興味深うございました。にしても、「確かにこれは狂気と紙一重の映画狂ぶりだ。だが、カイエの連中はいつだってアタマがおかしかったのだ(This is cinephilia, surely, at the edge of insanity, but Cahiers has always been out of its head)」というくだりには思わず笑っちゃいましたが(あ、これはリンチではなくて、ブライアン・デ・パルマの「ミッション:インポッシブル」を「90年代アメリカ映画の最高峰」とするEmmanuel Burdeau氏の文章に対しての記述ね、念のため。ほんでもって、基本的にDillon氏は褒めてますので、これまた念のため)。

« 2009年11月 | トップページ | 2010年3月 »

最近のトラックバック