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2009年7月 8日 (水)

「ロスト・ハイウェイ」を観た (51)

教訓:エレピを運びながら、ベーアンの位置を動かそうとしないこと

えー、ナニがナニやらとお思いでしょーが、上記のようなコトをやらかすってーと、あまりおヨロシクない結果になりますよ……とゆーお話でありマス。ええ、はい、大山崎は某音楽系の集まりの際にやらかしまして、まあこの、一言でいうと「腰が痛えよ!」(笑) てなわけで、PCの前にまとまった時間座れないどころか、寝っ転がってネットブックをお腹に載っけても腰に響く始末で、実はデジタル・デバイドって腰から来るんですねえ。ははは(力のない笑い)。

かような艱難辛苦(いや、自業自得だろ?)を乗り越え、腰をさすりさすり続く「ロスト・ハイウェイ」における「イメージの連鎖」の続き。今回は、(1:28:13)から(1:36:09)までについての第二回目。んでもって、パート1の続きをば。

この後、引き続き「ロスト・ハイウェイ」は「ピートとアリスの会話」という形で、フレッドの「内面」で発生している「意識の流れ」を追い掛ける。フレッドの意識は、これまた引き続き直前の「ミスター・エディの訪問=現実による侵入」(1:26:29)によってダメージを受けた「自我」および「幻想/捏造された現実」の修復を続けるが、その過程でみられるのは、やはり”新たな「欺瞞」の構築”だ。

パート1(続き)
(1:29:00)
(6)ピートのアップ。アリスの左肩越しのショット。彼の右頬を撫でるアリスの黒いマニキュアを施した親指。右手を伸ばし、アリスの頭に添えて、目をつぶり顔を寄せていくピート。接吻を革す二人。アリスの左手も、ピートの左頬から耳の後ろあたりまでに添えられる。顔の角度を変え、何度もキスをするアリスとピート。やがて二人は唇を離す。
アリス:
If we could just get some money,(両手でピートの頬を撫でさすりながら) we could go away together.
アリスを見つめるピート。彼の頬を滑り落ちるアリスの両手。
(7)
アリスのアップ。ピートの右肩越しのショット。また彼の頬に手をあて、唇を合わせながら目を見開く。手は彼の頬に残したまま、顔を離すアリス。真剣な表情を浮かべている。
アリス: I know a guy.
ピートの首筋の後ろに左手を回すアリス。ふと表情が曇り、目を伏せ気味にする。
アリス:(目を上げ、ピートの目を見つめながら)He pays girls to party with him. He's always got a lot of cash. (かすかに笑みを浮かべながら)He'd be easy to rob.
ピートの首筋に左手を掛け直すアリス。
アリス: The we'd have the money. We could go away,
(8)ピートのアップ。アリスの左肩越しのショット。上半身をかがめ気味にアリスの目を見つめているピート。アリスの両手はピートの首筋の後ろに掛かっている。ピートは無言のままだ。
アリス: and we could be together.
無言のまま、上半身をやや起こすピート。彼の首筋から滑り落ちるアリスの両手。離れる二人。ため息をつきつつ、上げた左手の指を顔の横でこすり合わせながら、アリスを見つめるピート。
ピート:(かすれ声で)Have you partied with him?
(9)アリスのアップ。彼女の左斜め前からのショット。目を伏せ、ややうつむき加減になる。また目を開き、居心地悪そうに画面左のピートのほうを見るアリス。無言のまま、また目をつぶる。
(10)ピートのアップ。アリスの左肩越しのショット。そのまま、アリスの返答を待っている。やがて、自分の右下方向を、続いて左上方をちらりと見てから、アリスに視線を戻す。
ピート: Do you like him?
自分の右下方向に目を逸らすピート。
身を乗り出し、右手を彼の頬に伸ばして撫でるアリスの後頭部。
アリス: No. it's part of deal.
ピートの顎に右手を伸ばし、彼を自分の方に向かせるアリス。手を離し、体を離す。顎を突き出すようにするピート。
ピート: What deal?
(11)アリスのアップ。彼女の左斜め前からのショット。躊躇ったあと、意を決したように話し始めるアリス。
アリス: He works for Mr Eddy.
ピート:(画面外で)Yeah? And what's he do?
アリス: He makes films for Mr Eddy.
(12)ピートのアップ。アリスの左肩越しのショット。顔のあたりまで上げた左手の指をこすり合わせつつ、眉を上げるピート。
ピート: Pornos?
アリス: Yeah.
動揺したように自分の左のほうを見てから、再び正面を向くピート。
ピート: How did you get in with these fucking people, Alice?!
左手の人差し指の先を、自分の左の額に当てるピート。
アリス: Pete...no...
ピート:(遮るように)No 'Pete'!
ピートの剣幕に、黙るアリス。
ピート: I want to know how it happened.
(13)アリスのアップ。彼女の左斜め前からのショット。うつむき加減に目を伏せているアリス。やがて目を上げてピートを見る。時々目を伏せながら、話し始めるアリス。
アリス: Long time ago...I met this guy at a place called Moke's. We became friends. He told about a job.
(14)ピートのアップ。アリスの左肩越しのショット。うつむき、左手で額のあたりを押さえるピート。やがて眉のあたりを人差し指で支えて、目をつぶる。
ピート: In pornos?
まばたきをしながらアリスを見るピート。
(15)アリスのアップ。彼女の左斜め前からのショット。しばらく黙っていたが、笑みを浮かべて小さく首を振る。
アリス: No. Just a job, I didn't know what.
笑顔を消し、目を伏せてうつむくアリス。
(16)ピートのアップ。アリスの左肩越しのショット。左に首を傾け、アリスの言うことを聞いている。
アリス: He made an appointment for me to see a man.

フレッドの「意識」や「感情」をキーにしてみたとき、カット(6)からカット(8)にかけてのアリスの言及が「新たな遁走」の示唆であることは明白だろう。結局のところ、当面のフレッドの目的である”「アリス=レネエの代替イメージ」を確保しつつ「捏造された現実」を保持する”ためには、「ミスター・エディ=現実」の影響から逃れるしかないという、単純といえば非常に単純な発想である。

問題は、そのための方法論として、「ある男」から金銭を強奪するという「提案」がアリスからなされることだ。そこにはフレッドが抱いている複雑な「意識の流れ」が交錯しているのがみてとれる。かつ、注目に値するのは、それをトリガーにして発生する新たな「イメージの連鎖」が表象するものだ。

まず指摘できるのは、アリスが言及する「ある男」が、具体的には「アンディ」を指していることだ。これは後に(1:42:54)から提示される映像などによっても明示されるわけだが、注目すべきなのは、”なぜ彼がここで「強奪」の対象として言及されるのか”という点だろう。

この疑問への回答は、実は「前半部」において提示された「アンディ関連の映像群」に隠されている。それらの具体的映像を観返してみれば、アンディが非常に「胡乱な存在」として描かれていることに気がつくはずだ。「遊び人」のような風体という表層的な造形はもちろん、どのような職業に就いているかも不明であるのにプール付きの豪邸に住み、盛大なパーティを開いているという描写など、彼は徹底的に「不審な人物」として提示されている。いうまでもなく、こうした「描写」自体が、アンディに対してフレッドが抱いている「感情」の反映であり、基本的にリンチ特有の「表現主義的な発想」に基づくものだ。最終的にパーティから帰宅する途上の車中で、フレッド自身がレネエに向かって「あの糞野郎とどこで知り合ったんだ?(So how'd you meet that asshole Andy anyway?)」と言及するように(0:33:04)、彼はアンディに対して抜きがたい「不信感」を抱いているのである*

アンディに対するこうした「不信」をフレッドが抱くに至ったそもそもの理由もまた、「前半部」における映像によって示唆されている。(0:12:25)における「レネエをいずこかへと連れ去っていくアンディ」の映像がそれだ。つまり、フレッドがレネエを殺害するに至った「彼女に対する不信」の要素のひとつが他ならぬ「アンディ」であり、もっというなら「彼女と彼の関係」だということだ(もちろん、この「具体的映像」もあくまで「フレッドの主観映像」に過ぎず、この二人の関係が作品内現実において成立していたか否かを明確に表す映像は存在しない)。

というような機序を踏まえれば、「後半部」においてアンディが「強奪の対象(のイメージ)」として想起されるのは、ある意味、当然であることがわかる。フレッドにとって、彼は「レネエを奪った相手」(繰り返すが、この疑惑がリアルであるかどうかはまったく定かではない)であり、それがゆえに「罰せられるべき存在」たり得るからだ。彼からの「金銭の強奪」は、形を変えたフレッドによる「処罰」であり「復讐」なのである。

ここまではよいとして、特筆すべきなのはこの後、「処罰の対象=アンディのイメージ」をトリガーとして発生している「イメージの連鎖」である。ひとつ明確なのは、この連鎖において、フレッドが「現実のレネエ」に対して抱いていた「不信」の本質、あるいは彼がレネエに対して抱いている「二律背反的」な感情が明瞭に浮き彫りにされていることだ。

カット(13)でアリスがピートに向かって語る「アンディと知り合った経緯」が、(0:33:04)においてレネエがフレッドに語った「アンディと知り合った経緯」のリフレインであることはすぐに気がつくだろう。いわく、「モークの店で出会い、友人になり、仕事を紹介してもらった」……この発言はアンディの屋敷から自宅に帰る途中、レネエがフレッドに説明した内容と完全に同一である。当該シークエンスにおけるレネエとフレッドの会話はそれ以上進展することなく終わったが、その際にフレッドが口には出さなかったものの「内心」抱いていた疑惑は、現在論じているアリスとピートのシークエンスに至って完全に顕在化する。そして、その「疑惑の性格」を端的に表しているのが、カット(12)およびカット(14)で発生している「アンディが紹介した仕事」と「ポルノ」の連結だ。

もちろん、これまた何の具体性も裏付けもない「疑惑」でしかない。というより、ここで重要なのは「何が作品内現実において発生したか」というような具象的な問題ではない。重要なのは”「紹介された仕事」と「ポルノ」の「イメージ上の連結」”という抽象的な問題であり、その結果として構築される「フレッドにとって都合のよい幻想」……「新たな欺瞞」そのものだ。その「欺瞞」はこう告げる……アンディが罰されるのが当然であるように、彼が紹介した「いかがわしい仕事」に関係した「レネエ」もまた罰されるべきである……フレッドは「レネエ殺害」という自分の罪を、このように都合よく正当化するのだ。それも、カット(12)のピートの様子が示すように、「保護者然」とした態度でアリスの身の上を気遣うそぶりをみせつつ、彼女がとった軽率な行動に「非難」を浴びせながら。

その「非難」に対し、アリスは「仕事の内容は知らなかった」と弁明する(カット(15))。当然ながら、これもまた「フレッドの意識」の「代弁」として捉えられるべきものだ。すなわち「保護者」たるピート=フレッドには、アリス=レネエの「懺悔」を聞き、彼女を「許す準備」があるという宣言である。そして、その根底に存在するのは、フレッドがレネエに対して抱いている愛憎が入り交じった「感情」だ。結局のところ、フレッドはレネエを「処罰」すると同時に「希求」せざるを得えないのである。こうした「感情」を反映して、このシークエンスにおいては、「非難」という(作品内現実において発生した「レネエ殺害」という事態に比べて)より「穏やかな処罰」がアリスに対して下されるのみで終わる。

だが、ピート=フレッドがみせるこの「寛容」には、もう一段「からくり」がある。彼は、「アリス=レネエ」の代わりとなる”別の「非難の対象」”を設定するのである……カット(11)でアリスが言及するように、「ミスター・エディ」という対象を。「ミスター・エディ」が「現実に関連するイメージ」として登場していることを考えるなら、これは非常に巧妙な「責任転嫁」であるといえるだろう。「レネエ殺害」という事態が発生したのは、フレッドのせいでもなければレネエのせいでもない、すべて「彼ら以外の他者=現実」にその責があるというわけだ。ある意味で、これこそフレッドがその「内面」において抱いている「本音」である。

振り返ってみれば、実は早い段階から「ミスター・エディ」のイメージは「いかがわしい仕事=ポルノ」と連結されていることに気づく。(1:06:49)における"「ポルノのビデオ・テープ」のオファー"という事象がそれであり、これはフレッドが「現実」に対して抱いているイメージ(あるいは「感情」)を物語るものであることは以前にも触れたとおりだ。現在論じているシークエンスの映像群は、そうしたフレッドの「現実」に対する「感情」をより詳細に、かつ明瞭に表象しているといえるだろう。アンディが「レネエを奪い取り去る者」であり「いかがわしい存在」であるならば、その背後で黒幕として存在する「ミスター・エディ」も同類なのである。いや、これは順序が逆だ。「現実」こそが「レネエを奪ういかがわしいもの」であり、アンディはその一部であると同時に「現実」によって「使役されている存在」に過ぎないのだ。度々現れてきた”「アリス=レネエの代替イメージ」が「ミスター・エディ=現実」の支配下にある”ことを示す映像は、こうした文脈においても、フレッドの「意識」の反映としてまったくもって妥当なのである。

このようにして、フレッドは「レネエ喪失」の責任を「現実」へと転嫁する。前述したフレッドの目的……”「アリス=レネエの代替イメージ」を確保しつつ「捏造された現実」を保持する”うえで、あるいはダメージを受けた「幻想」と「自我」の修復を図るうえで、これは「非常に都合の良いもの=欺瞞」だ。以降、パート2において、フレッドの「意識」はこの「欺瞞」の強化(あるいは具象化)の方向へとイメージを連鎖させていくことになるわけだが、その詳細は以降の回に譲ろう。

さて、このようにフレッドが新たな「欺瞞」(あるいは「遁走」)を構築するかたわらで、アリスがいわゆる典型的な「ファム・ファタール」としての性格をあらわにし始めていることも見逃してはならないだろう。それこそエミール・ゾラの「ナナ」から「嘆きの天使」(1930)のローラを経て、「深夜の告白」(1944)をはじめとするフィルム・ノワールの諸作品など、過去、さまざまなジャンルの数多くの作品において「男を破滅に導く運命の女」の存在が描かれてきた。「金銭強奪」という犯罪教唆をまつまでもなく、アリスが明確にその一員であることは、この後の「ロスト・ハイウェイ」の展開が示すとおりだ。

しかし、忘れてはならないのは、アリスが「ファム・ファタール」であり得るのは、その「原型」であり、彼女と「内的に等価」であるレネエこそが、そもそもフレッドにとって「ファム・ファタール的存在」であったからだという「事実」である。「前半部」における「現実のレネエ像」が、たとえば「ルナ・ラウンジに行かない」と彼女が宣言するシークエンス(0:05:45)にみられるように、フレッドの「希求」(あるいは「願望」、あるいは「欲望」)にときとして応えない「コントロール不能」の存在として描かれていることは、以前にも述べたとおりだ(もちろん、これらも「フレッドの主観映像」に過ぎない)。いずれにせよ、レネエが「一個の人間存在」として自我を備えている限り、彼女がフレッドの「希求/願望/欲望」に100パーセント応えることは現時的に不可能であり、彼女をコントロールできると考えること自体がフレッドの「幻想」であることも間違いない。だが、こうした「幻想」と「現実」の乖離こそが、結果としてフレッドをして「レネエ殺害」に向かわせた要因であることもまた確かだ。いうならば、フレッドを凶行に走らせたのは彼自身の「過剰な願望/欲望」であり、それが「十全に応えられなかった」ことによって芽生えた「猜疑心」なのである。

ファム・ファタールと呼ばれる存在が備える「本質」の「ある一面」がここにある。さまざまな作品に登場するファム・ファタールが共通して備えるのは、まさしく「コントロール不能」という「特性」であり、それは彼女たちによって破滅させられる男たちが抱える「応えられない希求」……「過剰な願望/欲望」によって成立しているのだ。言葉をかえれば、そうした男たちはすべて自らの「欲望」によって「自滅」しているのである……ちょうどフレッドがそうであったように、あるいはこの後のピートがそうであるように。もしこれをリンチによるフィルム・ノワール作品への「目配せ」だとするならば、これまた単純な「引用」の域を超えた、”「本質性/普遍性」への言及”であるといえるのではないだろうか。

(この項、またもや続く)

*この「フレッドの不信感」は、カット(7)におけるアリスの言及……アンディが「金で女の子を手配した」という言及によっても「代弁」されている。これが”アンディ宅での「パーティ」に対する揶揄”でなくてなんだろう。

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