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2009年5月 5日 (火)

「ロスト・ハイウェイ」を観た (43)

さーて、ゴールデン・ウィークの真っ最中でございますが、皆様方にあらせられましてはいかがお過ごしでございましょーか。大山崎は例によって、買ったっきり溜まっているDVDやら本やらを消化するつもりでおったのですが、ついうっかりノテノテと「芸者vs忍者(Geisha Assasin)」(2008)なんてものを観て、「んじゃ、忍者は芸者じゃないわけ?」とか「主人公の父親は、いったいナニを弟子に教えてたのだろーか?」とか悩んでいるうちに連休が終わっちゃいそーな勢いなので、ちょっと困ってます(笑)。

それはそれとして、「ロスト・ハイウェイ」における「イメージの連鎖」の続き。今回は(1:20:32)から(1:21:13)まで。

映像のつながりとしてみたとき、このシークエンスは、前回とりあげた「ホテル」でのシークエンスから継続する大きなシークエンスとして理解されるものである。そのことは、前回のシークエンスから今回のシークエンスがディゾルヴによってつながれることによって、あるいは同じBGMがずっと継続して流されていることによって明示されているといえる。

というようなことを踏まえたうえで、まず具体的な映像からみてみよう。

どこか 夕方 (1:20:32)
(1)ロング・ショット。暗い海辺の丘。下方から上方へパン。海を挟んだ半島。水平線に沈もうとしている夕日。茜色と灰色が混じった雲(S083と同一)。
(ディゾルヴ)

ホテル 外部 (1:20:37)
(2)(ディゾルヴ)
テラス状になったホテルの二階の通路から、階下を見ているアリスのバスト・ショット。アリスはノー・スリーブの黒いドレスを着て画面右端に立ち、通路の黒い金属の手すりに両手を乗せている。ピートの車の音を聞きつけて前方右に視線を上げ、伸び上がり気味に手すりから身を乗り出すアリス。それとともに左下方へパン。画面中央あたりには、ホテルの受付の灯りの点った窓が見える。受付の建物の前、画面の左のほうには駐車場へ続くと思われるホテルの道路があり、そこにヘッド・ライトを点けたピートの黒い車が入ってくる。道路の奥に向かって、画面左に進むピートの自動車。それを追って左へパン。
アリス:(画面外から)Hey!
(3)アリスのバスト・ショット。画面の右に、二階通路の手すりに両手をかけ、眼下のピートの自動車を見下ろしている彼女を見上げるショット。
アリス: Up here!
(4)ミドル・ショット。ホテル内の道を画面左に向かって進むピートの自動車を、上斜め右から捉えたショット。それを追って、左へパン。道路に設けられたバンプ(障害帯)を乗り越えてゆっくり進ながら右へ曲がろうとする自動車。
アリス:(画面外から)Come on up, baby.
(4)アリスのバスト・ショット。画面の右に、二階通路の手すりに両手をかけ、眼下のピートの自動車を見下ろしている彼女を見上げるショット。
アリス:  I already got the room.
(5)ミドル・ショット。ピートの自動車の左側面を、上方やや左からおさめるショット。左腕を開けられた運転席のサイド・ウィンドウにかけ、右手でハンドルを操作しながら、ほほ笑みを浮かべてアリスのほうを見上げているピート。
(6)アリスのバスト・ショット。画面の右に、二階通路の手すりに両手をかけ、眼下のピートの自動車を見下ろして、ほほ笑んでいる彼女を見上げるショット。
(7)ミドル・ショット。ピートの自動車の左側面を、上方やや左からおさめるショット。そのまま画面の左端から走り去るピートの自動車。

ホテルの敷地の外 外部 夜 (1:20:55)
(8)ロング・ショット。ホテルに向かって近づく刑事たちの車の後部座席から、刑事たちの肩越しにフロント・ガラスをとおして見た、ホテルの外観。やがて、刑事たちの自動車は停車する。二階建てのホテルの白い壁、その前にまばらに立っている木々。オープンになった一階と二階の通路。通路の黒い鉄の手すり。二階の左のほうの通路で待っているアリスと、彼女に向かって左から近い付いてくるピートの姿が小さく見えている。
(9)ミドル・ショット。刑事たちの主観ショット。ホテルの二階の通路で身を寄せ合い、口づけを交わしているピートとアリスの全身のショット。二人の右には開け放たれた客室のドアがある。やがて、アリスを先頭に、二人は開けられていたドアから客室の中に入る。後ろ手にドアを閉めるピート。客室の青いドアが音を立てて閉まる。
(フェイド・アウト)

再び(前回に比べて簡易な)映像による「闇の到来の宣言」とともに、前回とりあげたシークエンスで発生した事象が、形を変えてリフレインされる。「監視/追及」のイメージである「二人の刑事たち」が登場するところも含めて、このシークエンスが提示する「ピートとアリスの逢引」は前回のパターンの完全な踏襲であるといえるだろう。ピート=フレッドは「アリス=レネエの代替イメージ」を手に入れ、とりあえずの彼の「希求」は満たされたわけだが、当然ながら一度手に入れた「希求の対象」を彼が手放すわけがない。リフレインされる「ピートとアリスの関係」は、フレッドが「アリス=レネエの代替イメージ」に固執し、「内面」においてそのイメージを繰り返し想起していることを指し示している。

興味深いのは、アリスが”ホテルの「二階」”でピートの到着を待っていることである。カット(2)からカット(7)をとおしてみればわかるように、ピートはアリスを見上げ、かつ彼女に見下ろされている。ピート=フレッドにとって、彼女が「見上げる対象」であること……つまりは「希求の対象」であることがこの「高低差」によって示唆されているわけだが、その状況はこのシークエンスにおいて変化する。アリスはピートに「上がって」くるように呼びかけ(カット(4))、彼がそれに応えて「二階」に上がり、彼女に合流することで最終的にこの「高低差」は解消されるからだ(カット(8)(9))。この「高低差の解消」が、ピート=フレッドが「アリス=レネエの代替イメージ」を手に入れ、「希求の対象」と同じ「高み」に至ったことを表象しているのは明らかだ。

そして、かわって「低い位置」に取り残され、ピートとアリスを「見上げる」のは「監視/追及の施行者」である「二人の刑事たち」である(カット(8)(9))。(0:25:33)の「フレッドの家」における「監視」のイメージ、あるいは(0:43:40)の「死刑囚房」における「監視」のイメージをみればわかるように、「監視/追求の対象」であるフレッドは同時に「見下ろされる対象」でもあった。以前にも述べたように、これは「監視/追求」のイメージから彼が受けている「威圧感」や「被害意識」の表れであると捉えられる。しかし、この「高低の位置関係」は、(0:54:29)(0:59:47)(1:09:49)の三回にわたって提示された「監視する者」と「監視される者」が「同一平面上」に存在するという描写を経て、このシークエンスにおいてついに逆転する。かつて「見下ろされる対象」であったフレッドは、(角度こそまだマイルドだが)「見上げられる対象」あるいは「見下ろす者」へと遷移するのである。

かつ、上記三つのシークエンスで採用されていた「画面の奥から監視者の自動車が近づき、アップになる」という(フレッドが感じていた)「威圧感」を伝える表現は、(1:18:56)に現れる「監視/追及のイメージ」以降は姿を消してしまう。あるいは、現在論じているシークエンスでは、「監視/追求の施行者」であるはずの「二人の刑事たち」は、(1:18:56)のシークエンスでは存在したような「感想(The fucker get more pussy than a toilet seat!)」を述べる機会も与えられない(ということは、彼らはフレッドの「代弁者」として十全に機能していないわけだ)。それどころか、このシークエンスにあるのは「刑事たちの肩越しにホテルを見る車中からのショット」(カット(8))と「刑事たちの主観ショット」(カット(9))のみであり、「刑事たち自身」はもはや映像としてすら明瞭には提示されずに終わる。そして、最終的にピートによって閉ざされる扉によって刑事たちの「視線」は遮断され、彼らは「監視者」としての機能=アイデンティティをも喪失してしまうのだ。

こうした「監視/追及のイメージ」の「変遷」が物語るものは明らかだろう。フレッドが抱いている「全能感」は、「前半部」「後半部」を通じて抜きがたく彼につきまとっていた「監視/追及のイメージ」をも矮小化してしまう。その矮小化はエスカレートし、「監視/追及のイメージ」から感じていた「威圧感/圧迫感」を払拭してしまうばかりか、むしろ「優越感」すら抱くに至るのである。

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