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2009年3月 2日 (月)

「狂った一頁」のDVDとか、そのへん

衣笠貞之助監督の「狂った一頁」(1926)は、1921年の「カリガリ博士」の日本公開以降ちょいとしたブームになった「ドイツ表現主義映画」の影響下にあると巷でもっぱら評判の前衛的なサイレント作品で、川端康成を含めた新感覚派の作家陣が脚本に参加してて、ガンバって無字幕にしたら余計にワケわかんなくなっちゃって(笑)、もうフィルムが残ってないと思ってたら1971年に衣笠家の倉にあった米櫃からひょっこり出てきて……ってな詳細はあちらこちらを検索すれば簡単にわかるので、パス(笑)。一昨年には東京国立近代美術館フィルムセンターによる修復作業を受けた35mmサイレント版が、「国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)東京会議2007」と連動して記念上映されたりなんかしておりました。

YouTubeにアタマのほーの映像がアップされておりまして、まあ、こんな感じ

おお、ドイツ表現主義でもってロシア構造主義で、アヴァンな感じにギャルドだ(笑)。でもって、こちらが精神病院の廊下に、金襴緞子の花嫁を乗せた自動車が多重露光でデロデロと現れる……とゆー、イカしたクライマックス・シーン(笑)。

にしても、「影」を使った演出や「二重露光」のテクニックを介して、「舞台で踊る踊り子」が「病室の中にいる踊り子」へとシフトしていくシークエンスなんかは、今観てもなかなかなものがありますですね。明らかに「舞台で踊る踊り子」は「病室の中の踊り子」の「内面」において想起されているものであって、あるいは今この瞬間の「病室の中の踊り子」にとっての「現実」であるわけで。同様に、「嵐の窓」にオーヴァーラップして提示される楽器群が奏でる音楽も、「病室の中の踊り子」の耳に確かに聞こえているものであるはず。また、「精神病院の廊下」における主人公の「幻想」も、”彼の「内面」で発生している葛藤”の「視覚化」……自分の過去の行いがもとで精神を病んだ妻への贖罪の気持ちと、娘が結婚という幸福を掴むためにはその妻の存在が障害となるという焦燥感の「板挟み」に基づいたものに他ならないわけですね。

このように、少なくとも「映画における表現主義的手法」という観点からみたとき、海外で同時期に作られた映画作品と比べてもなんら遜色のない作品である、と個人的には思います。そーゆー意味では、1921年に「カリガリ博士」によって日本に伝えられた「表現主義的」な手法(当時の言い方に沿うなら「表現派」の手法)が、当初の「新奇なものに対する関心」の範囲を越えて、”「登場人物の内面」を映像で描く手法である”という認識のもとに、明確な意図によって採用されるようになったことを示している作品であるといえるのかもしれません。日本における表現主義映画として先行した溝口健二監督の「血と霊」(1923)が、(現在残っている当時の批評類を見る限りでは)「表現主義に対する理解の不足」を指摘されて終わった様子なのに対し、この「狂った一頁」は後世の作品における「表現主義的手法の一般化」につながるものとして評価されるべきであるよーに思います。ま、一言でいっちゃうと、”「幻想」と「現実」の等価性”あるいは”「外界」と「内面」の関係性”もしくは”人間の「記憶」や「認識」に関わるもの”の映像化として、リンチ作品なんかの思い切り遠い祖先のひとつみたいな作品なんでありマス。

で、「ネットの海」をドンブラコと漂っているうちに見つけたのが、イギリスの「National Institute of Japanese Studies」っつー研究機関のページ。題して「日本映画はコレ観なきゃダメ! 必見の15本!」(思いっきり意訳しています)。黒澤や溝口や成瀬に混じって「狂った一頁」も必見リストに挙げられているのだけれど、おや、この作品の「DVDが今年出るよん(DVD will be released in 2009)」とか書かれているじゃあーりませんか。

うお、マジっすか! かなり非常にとっても欲しいかも! と物欲が頭をもたげて(笑)、再び広大な「ネットの海」をさまよってみたんだけれど、具体的な情報が見つからない。引っかかるのは、まあ、なんちゅーか、どうも出所がウニャウニャっぽいのばっか(笑)。

うーん、結局、真偽のほどは不明。もうしばらく様子をみて、それでも情報が出てこないよーなら、記事を書いたご本人に問い合わせるしかないかナー……とか悶絶する今日この頃なのでした。

3/3追記:「狂った一頁」についての評論「A Page of Madness  Cinema and Modernity in 1920s Japan」(読んでみました。感想等はコチラ)を出版したばかりのイェール大助教授Aaron Gerow氏のページ「Tangemania」にも「2009年にDVD発売」という記述がありました。が、評論本が刊行されたことを告知する2009年2月24日付のニュースによると、どうやらDVD化の実現は危うくなっている気配です。このDVD化の話は、日本の某大学教授が国内のメーカーに働きかけて進行していたようなのですが、直近の状況ではメーカー側が難色を示し始めているとか。以下にGerow氏のこの件に関する記述を引用しておきます。

What would make the publication even better is if there was a DVD of the film out there. There are people who sell pretty bad copies  on VHS or DVD on the net, but only a real professional mastering could do justice to that film's visual complexity. A colleague in Japan is working on bringing out a DVD commercially in Japan, but the last word was that the company is showing second thoughts. I keep on telling him there is strong demand for such a DVD abroad, but some Japanese companies can be pretty dense about foreign markets. Maybe this book will be one more argument for putting a DVD out.

いえ、外国だけじゃなくて日本でもDVD欲しい人が、ここにいるんですけど……。

7/25追記:その筋に近いところからいただいた情報によると、「何年か前にDVD化の話が出ていたけど、その後、立ち消えになった様子だ」という話です。「何年か前」っていうのは、おそらくサイレント版からの復元版が上映された2007年頃のことなんでしょうね。なんにしても残念な話であります。

2010/8/13追記:この記事を書いた当時、コメント欄に奈良での上映情報をいただきました。今になって、2009年に続き2010年にも奈良で上映されたこの「狂った一頁」のフィルムが、個人の方が所蔵されていたものであることを知りました。うわ、それはすごい。詳細についてはこちらでどうぞ。

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コメント

日本映画黎明期の傑作、実験的観賞会へお誘い

        日時:7月5日(日) 13:00~
     場所:奈良市中部公民館 第二会議室

1975年頃、衣笠家で偶然発見された「狂った一頁」が、
京都府庁経由で、持ち込まれました。
腐敗が進み、殆ど溶解寸前の最悪の状態でした。
当時の東洋現像所に協力を依頼。技術者の懸命の努力により、
正に奇跡の復元に成功し、35㎜フィルムから16㎜フィルムにました。
(アナログである16㎜フィルムを、電子的映像に変換する装置は、
 保有が少なく苦労しましたが、鑑賞が可能な状態にしました。)
この日本映画の文化遺産である作品を、広く知ってもらいたく、
鑑賞会という形で披露する次第です。

   日本映画黎明期の傑作 上映会プロジェクト
   (元 ならシルクロード博催事プロデューサー) 
                  

上映情報をどうもありがとうございました。

内容からするとサウンド版のようですが、ひょっとして
京都文化博物館所蔵のフィルムでしょうか?

こんにちは
上記にコメントを書かれているハンドルネーム橿原さんは
他界されました。
8月には奈良県内で追悼の映画上映会が実施されたりしました。

「狂った一頁」についてですが、フィルムライブラリーのものをのぞき、一般に出回っている「狂った一頁」のビデオ等は、そのほとんどが京都文化博物館版だと思われます。
また、この京都文博版を作った際の話しが以下のpdf3枚目、右上にでています。

http://bit.ly/cRqdCa

これによれば、再発見されたのち、衣笠監督の手によって音声が加えられたものは、大幅に改変されているようですので、現存する「狂った一頁」の著作権の保護期間の開始は1971年に再発見され、再編集、音楽の付与が行われたため新たな創作物が作られたということになり、衣笠監督が1982年にお亡くなりになられたことが優先され、死後70年間は著作権保護期間だと考えられるのではないでしょうか。

権利処理をするには、権利を相続された方の利用許諾等が必要になると思います。

権利関係がクリアにならない限りはみDVD化などは先になりそうですね。

どうもはじめまして>HIVIさん

あっ、やはり樫原さんはあの方だったんですね。亡くなられたことは、今年の「狂った一頁」の奈良での上映で説明を担当された活動弁士の片岡一郎さんからお聞きしておりましたが、橿原さんだと確信がもてなかったので触れずにおりました。改めてご冥福をお祈りしたいと思います。

追悼上映のお話も片岡さんからうかがっていたのですが、残念ながら参加叶わずでした。

「狂った一頁」の権利継承者に関しての詳細はわからないのですが、なんらかクリアする手立てがあることを祈るばかりです。

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