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2009年1月 4日 (日)

「Beautiful Dark」を読む (9)

これがまた続くときは続く、Greg Olson著のデイヴィッド・リンチ伝記本「Beautiful Dark」のおハナシ。

さて、今回は寄り道とゆーかオマケとゆーか。「イレイザーヘッド」の製作途中にリンチが製作した短編作品「切断手術を受けた人(The Amputee)」(1974)について。

リンチがこの作品を作った経緯をおさらいすると、まだカセット方式のヴィデオ・システムが爆発的に売れるようになる以前、ソニーが自社のビデオ・テープを評価用としてAFIに持ち込んだことに始まります。このビデオ・テープをお偉方が精査するためのテスト用カラー・パターンの撮影を任されたのが、「イレイザーヘッド」の撮影を担当していたフレッド・エルムスでした。エルムスからこのことを聞きつけたリンチは、キャサリン・コールソンに声をかけ、そのビデオ・テープを使って5分間の作品を撮影してしまいます……って、いや、無茶すんなあ(笑)。

あえてリンチを弁護するなら、そのころ「イレイザーヘッド」撮影用のフィルムを買うための資金捻出にリンチおよびスタッフ一同は非常に苦労していて、スタッフによるカンパなんかは当たり前、コールソンなんかはウェイトレスまでして製作資金を提供するとゆーよーな状況でありました。そういう撮影できるんだったら何でも見境なく撮っちまえ的な精神状態であったであろう連中のところに、のこのこビデオ・テープなんか持ち込むほうが悪いといえなくもなく……うむ、あんまり弁護になってないな、これ(笑)。

さて、てっきりテスト・パターンが写されているとばかり思っていたAFIの教授たちは、映像を観てびっくり。しかし、一人の教授が映像スタイルからリンチがそれを撮ったことを見分け、「リンチがコレにからんでるのか?」と尋ねたという話もあって、わはは、完全にバレてら(笑)。逆にいえば、その頃からリンチの映像は特徴的であったということの証明でもあるわけですが、それを見て取った教授もさすがとゆーことでありましょーか。そして、「初期短編集」のDVDにこの作品が収録されているということは、AFIの教授たちは作品が収められたビデオ・テープを取り上げたりしなかったっつーことですね。うーん、寛大だなあ。リンチ・ファンとしては感謝すべきなんでしょーね。

しかし、そっかー、確かクリス・ロドリーのインタビュー集では「ビデオ・テープ」のメーカー名は明らかにされてなかったと思いますが、ソニー製であったのかー。「インランド・エンパイア」よかずっと以前に、リンチはソニーのビデオ機材を使って作品を撮ったことがあったわけでありますね。

……というような経緯で作られたこの作品、観ればわかりますが出演者はコールソンとリンチの二人。ただし、リンチは終始カメラに背を向けていて、顔は映っていません。特にストーリーというべきものもなく、コールソンは足の切断手術を受けた患者を演じ、リンチは白衣を着て医師の役を演じています。椅子に座ったコールソンの前にリンチが跪き、包帯を解いて傷口をあれこれ調べている間、コールソンはまったくの無表情のまま煙草をくわえ、手紙を書きつつその内容を声を出して読み上げています。最後にリンチが画面から走り去り、暗転して作品は終了。

このコールソンが読み上げる断片的な「手紙」の文言に、Olson氏はリンチ特有のモチーフやテーマを認めます。

「そこには本能に対する重圧がある(『彼は何も言わなかったけれど、私にはそれが本当のことだとわかっていたわ』)。破壊的な炎の力がある(『ハリーは小屋の中にある全部のレンジに火をつけたわ--彼は近所の家を全部焼こうとしたの』)。そして、作品が終わったあとも終わらない謎がある(『ポウルが夜中の三時に家に帰ってきたとき、あなたはどこにいたの?』)。」

大山崎としては、そこに散りばめられた「小屋(cabin)」「家(house/home)」というキーワードも気になるところでありますが、それはそれとして。

「興味深いのはリンチ自身が、自然の謎を”調査”することを通して混沌と破壊に挑戦する”科学の側に立つ者”を演じていることだ……ちょうど彼の父親がそうであったような。そして、この後のリンチ作品には、彼の代行者である探偵役の人物たちが何度となく登場することになる」

うーむ、ってーことは、キャサリン・コールソンも「自然の謎(enigmas of nature)」であるわけですかー。なるほど「丸太おばさん」だもんなあ(そーゆーことなのか?)。そーいえば、リンチがコールソンが眼鏡をかけるのを見て「丸太を抱えた彼女」のイメージを想起したのも、「イレイザーヘッド」製作中のことであったのでした。

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