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2008年12月30日 (火)

「ロスト・ハイウェイ」を観た (25)

えー、突然の「電源落ち」を繰り返しながらそれでも健気に動いていてくれていたLinux2号機君ですが、またもや書きかけのテキストが消滅して、ついにこちらの堪忍袋の緒が切れました(笑)。とゆーわけで、酔っ払った勢いに乗じて巷で大流行のNetbookをばポチっとな。ううむ、当たり前だけど、Linux2号機君よりも速いうえに熱くないぞ(笑)。とゆーわけで、Linux2号機君は現役引退確定。さらばじゃー。

んでわ、前回から引き続き今回も「ターニング・ポイント-1(0:41:49)-(0:51:16)」を構成するシークエンスをとりあげてみる。今回はそのうち、(0:42:11)から(0:44:49)までのシークエンスをみてみよう。

死刑囚房 (0:42:11)
(ディゾルヴ)
(1)死刑囚房に続く階段。階上からさしている光。踊り場が途中にあり、手すりには四角い頭の柱がある。壁にも鉄パイプの手すりがある。後ろ手に手錠をはめられたフレッドが看守にひきつれられて、階段の上から下りてくる。二人の背後に、もう一人の看守が付き添っている。
陪審員長の声:(画面外で)We, the jury, find the defendant guilty of murder in the first degree.
フレッドたちが階段を下りるに連れて、下方にパン。
裁判長の声:(画面外で)Fred Madison, the jury having found you guilty of murder in the first degree, it is my order that you be put in death in the electric chair.
階段は最下部で左に折れており、フレッドたちは画面右方向に向かって下り続ける。画面左手には大きな鉄の扉が視界に入ってくる。階段を下りきり、鉄の扉をくぐって画面左方向に向かう三人。光によって、彼らの姿が明瞭に見てくる。三人が左方に進むに連れて、左に移動する視点。
(2)アップ。独房の鉄の扉の、内部からのアップ。頑丈な扉は四方を鉄の帯で補強され、リベットで止められている。扉の上部には、四角い覗き窓があるが、今は閉められている。
[鍵が触れ合う金属音。鍵が開けられる音]
向こう側に開かれる扉。扉を開けた看守(黒髪)が、扉を支えたまま左のほうを見ている。左から、後ろ手に手錠をはめられた囚人服姿のフレッドが姿を現す。もう一人の看守(白髪)に後ろから押され、独房の中に入るフレッド。フレッドと一緒に独房に入る看守。
白髪の看守:(画面外、左手下のベッドに何かを置きながら)Make yourself to home, fella.
(3)ミドル・ショット。独房の外から扉越しに内部を見るショット。黒髪の看守は扉を開けたまま外で待機している。独房の中で立っているフレッド。その右には白髪の看守。
白髪の看守:(フレッドに)Need anything, just ask the concierge.
独房を出る白髪の看守。黒髪の看守は扉に左手を伸ばして閉める準備をしている。
(4)ミドル・ショット。独房の内部から扉越しに通路を見るショット。立っているフレッドの背後からのショット。フレッドは扉越しに外の通路と二人の看守を見ている。扉を閉める黒髪の看守。それを見守ったまま動かないフレッドの後ろ姿。音を立てて閉められる扉、
(5)ミドル・ショット。独房の外部から扉の方向を見るショット。左に立った白髪の看守が、扉の下部に開いたスロットに身をかがめる。それを右から見守っている黒髪の看守。身をのばし、スロットから離れる白髪の看守。それを見て、入れ代わりに黒髪の看守が手錠の鍵を取り出しながらフレッドに声を掛ける。
黒髪の看守: Stick your hand out, chief.
(6)ミドル・ショット。独房の内部。扉に背中を向け、手錠の掛けられた両手を扉の方に差し出すフレッド。頭を垂れるフレッド。
[鍵が触れ合う音]
(7)ミドル・ショット。独房の外部のショット。扉のスロットから突き出されている手錠が掛かったフレッドの腕。黒髪の看守が手錠の鍵を外す。それを見守っている白髪の看守。
(8)ミドル・ショット。独房の内部。腰をややかがめ、手錠が掛けられた両腕をスロットに差し出しているフレッドの斜め左前からのショット。やがて手錠が外され、両手を下に降ろすとともに、上体を伸ばす。囚人服の左胸に付けられた番号は「47516」と読める。
(9)ミドル・ショット。独房の外部のショット。ずらりと並んだ独房の扉を、左斜め方向から見たショット。身をかがめ、フレッドの独房の扉に鍵を掛ける白髪の看守の背後。その向こうで、黒髪の看守が鍵を掛けられるのを確認している。鍵を掛け終わり、画面手前に向かって歩き始める二人の看守。
(10)ミドル・ショット。独房の内部。中を見回しているフレッド。やがて画面手前、独房の奥に向かってアップになるまで歩き、真ん中あたりで立ち止まる。ふと、画面の右下あたりに目を向けるフレッド。
(11)レネエの死体のカラー映像。画質は悪い。血まみれのベッドの上に置かれた、バラバラにされたレネエの腕や足。
[不気味な音楽]
(12)フレッドのアップ。呆然としていたが、やがて上方、天井の方を見上げる。
(13)ミドル・ショット。天井の鉄格子越しに、独房の中を見下ろすショット。鉄格子を見上げているフレッド。その背後には茶色の毛布が敷かれたベッド。右には洗面台。彼の前には蓋のない洋式便器、右には扉が見える。ゆっくりと視線を落とすフレッド。そのまま、両手を膝の上で組み、ベッドに腰掛ける。組んだ両手の上に、頭を載せ身を小さくするフレッド。
(フェイド・アウト)

それが「フレッドの記憶」であるか「作品内現実」であるかはともかく、「ロスト・ハイウェイ」はフレッドの身に「何があったか」を非常に手際よく凝縮して描いてみせる。シナリオではフレッドが判決を受ける「法廷」のシークエンスが存在するのだが、おそらくは編集の段階でそれに関する映像は完全に省略されたようだ。ただ、「票決を告げる陪審員長の声*」とそれを受けて「判決を告げる裁判長の声」が、カット(1)の死刑囚房に向かって階段を下りるフレッドの姿にヴォイス・オーヴァーで残されているのみである。この編集は簡潔でありながら充分に事の次第を伝えており、「階段を下りる行為」が表象する「フレッドの転落」の顛末を物語っている。

その後、カット(2)からカット(9)までは、見事なまでな「常套句的表現」であるといってよいだろう。過去、犯罪映画はもちろんのこと、シリアスな作品からコメディに至るまで、どれだけの数の映画作品が「投獄」あるいは「出獄」というパトスを描いてきたかわからない。それが作品の端緒であることもあれば結尾であることもあり、その始まりや終わりを告げる明確な「説話上の記号」として「投獄/出獄」が機能していることは明らかだ。リンチもまたその系譜を踏襲し、明瞭な「区切り」として「フレッドの投獄」を描く。そこにはカリカチュアのように誇張された「二人の看守」が配置されるが、彼らはミスター・エディという「顔役」と同じく「典型」であり、ミスター・エディが演じる「悪事」と同じく、看守たちの言動は「パターン化/記号化」されている点で一貫している。

もし、このシークエンスによって表されるものがフレッドが保持している「現実にもっとも近い記憶」であるならば、それはこの「看守」の例をみてもわかるように非常に「貧しい」ものだというしかない。前述したように彼らは「記号」でしかなく、とても生身の人間として描かれているとはいえないからだ。しかし、あるいは、それもまたフレッドの「現実」に対する「認識」がどのようなものかを逆説的に物語るものである。彼の「世界=内面」では彼だけが「生身」であり、彼の「感情」だけが「リアル」なのだ。

その意味で……すなわち、フレッドの「感情」の反映という意味で、それに続くカット(10)からカット(13)までの映像は、むしろ「前半部」において提示され続けた「表現主義的な手法に基づく映像」の延長線上にあり、逆により「リアル」であるとさえいえる。それを端的に表しているのは、カット(10)およびカット(11)によって提示される「フレッドの幻視」である。「第三のビデオ・テープ=ありのままの記憶」があらわにした「レネエの死の状況」が、(カラーではあるが、荒い映像として)独房に閉じ込められたフレッドの眼前に浮かび上がる。

注意をひかれるのは、カット(10)におけるフレッドの動作である。独房内に置かれた備品類との位置関係からして、独房内を奥に進みながらフレッドは最初「視線」を自分の左手に向けるが、明らかにその先に存在するのは「ベッド」である。次いで、彼は視線を自分の右下に向けるが、そこはベッドの(「独房」の入り口方向から見て)左横の「床」であるはずだ(右横は壁でしかないのだが)。この直後に「レネエの死の状況」がフレッドによって想起されており、明らかに何かを契機として「フレッドの幻視」は始まるわけだが、ではその「契機」とはいったい何なのか?

それに対する「手掛かり」となるかもしれないと思われるのが、カット(13)によって提示される「独房内部」の天井からの俯瞰ショットである。この映像で確認できるかぎりでは、「独房」の「入り口」は画面右下にあり、画面左上方には「ベッド」がある。そして、画面左端の「奥の壁」下方には「洗面台」と「便器」が配されている。非常におおかまではあるが、この構造は「フレッドの家」の「ベッド・ルーム」内の構造や、「ベッド・ルーム」と「バス・ルーム」の位置関係と合致している(0:36:04)。つまり”彼の家の「ベッド・ルーム」”と「独房」は、その構造において「相似形」であるわけだ。

この「独房の構造」を念頭においてカット(9)のフレッドの動作を追いかけたとき、彼の「視線」の先にあるであろうものが推察されることになる。彼は「ベッド」を見、次いで「洗面台」と「便器」を見て、最後にベッドの左横の「床」を見ている。「第三のビデオ・テープ」の映像(0:41:19)と対比させれば明らかだが、この「ベッドの左横の床」は、「フレッドの家」の「ベッド・ルーム」においてレネエの死体が横たえられていた場所なのだ。

では、彼に「レネエの死の状況」を想起させるキーとなったのは、「ベッド・ルーム」と「独房」の構造的な「相似性」なのだろうか?

こうした「相似性」を踏まえたとき、ある可能性が浮上してくる。つまり、この「相似性」は「物理的」なものに留まらないのではないか……という可能性だ。リンチ作品における「表現主義」や「象徴主義」を念頭におくなら、「外見上の相似性」はそのまま「象徴としての相似性」をも指し示していることになりはしないか? もしそうならば、「フレッドの家」がそうであったように、彼が投獄されたこの「独房」もまた「家」のテーマの延長線上にあるものとして捉えられることになりはしないだろうか? これは非常に興味深い「可能性」である。その構造のとおり、きわめて「閉鎖的」な「独房=家」は、「フレッドの家」との同一性を保ちつつ、しかし「閉塞」し「逃げ場」を失ったフレッドの「内面」を表象するものとして捉えられることになるからだ。

この”「家」としての「独房」”の「可能性」を補足するのが、カット(12)によって提示される「天井を見上げるフレッドのショット」と、カット(13)が提示する「鉄格子越しにフレッドを見下ろすショット」である。これは、(0:25:59)の「フレッドの家」のシークエンスにおいて現れた、「刑事のエドが天井の採光窓からフレッドを見下ろし、フレッドが採光窓越しにエドを見上げる」シークエンスと「相似形」である。かつ、このシークエンスで提示されるのがカット(13)の「見下ろされるフレッド」の「客観ショット」であるのに対し、「フレッドの家」のシークエンスでは「見上げられる刑事」が「フレッドの主観ショット」として提示されるという「対象形」が認められる。この点で両ショットは「視点」を転換した「対置関係」にあるといえ、互いに「ヴァリエーション」の関係にあると理解してよいだろう。いや、むしろ当該シークエンスに触れた際に述べたように、こうした「見上げるフレッド」あるいは「見下ろされるフレッド」の映像によって伝えられるものが”フレッドが感じてる「監視/追及」のイメージ”であるならば、カット(12)(13)によって提示されているものこそが、「フレッドの家」のシークエンスの「原型」となるものであるかもしれない。

となると、またもうひとつの可能性が浮かび上がる。実は、この「独房」こそが「フレッドの家」の「原型」なのではないか……という可能性だ。残念ながらその他の事象と同じく、我々=受容者がそれを確認する手立てはまったくないが、いずれにせよ、この「見上げる/見下ろされるフレッド」の映像が示唆するものが、「フレッドの家」と「独房」の「共通性」であることは間違いないはずだ。

独房 内部 (0:44:16)
(フェイド・イン)
(14)ミドル・ショット。上方からのショット。独房のベッドに横たわり、白い枕に頭を乗せ、額の上で手を組んでいるフレッド。ゆるやかに左へパン。ベッドの左の汚れた白い洗面台が見えてくる。
(15)ミドル・ショット。フレッドの主観ショット。ベッドあたりから上を見上げるショット。独房の天井の鉄格子と、その上の円形の照明、照明が下がっている白い天井。照明の白い光が、両側の壁に反射している。
(16)フレッドの家のベッド・ルームの床に仰向けに横たえられた、レネエの死体。血にまみれた死体の上半身。カラーだが、画質はよくない。胴体あたりから頭までパン。
[衝撃的なノイズのような音楽]
(17)フレッドのアップ。ベッドに横たわり、額の上に組んだ両手を乗せ、ぼんやりと天井を見上げているフレッド。
(フェイド・アウト)

前述したように、もし「独房」もまた「家」であり、フレッドの「内面」を指し示すものであるならば、収監された彼は「物理的」にだけでなく、「精神的」にもそこから逃れようがない。そのような境遇にあるフレッドにできるのは、カット(14)からカット(17)が表すように、「あの夜」のことを繰り返し想起すること……つまり「レネエ殺害」に関する「ありのままの記憶」を蘇生させ続けることだけだ。いうまでもなく、それはフレッドがもっとも回避したいと感じてる「状況」である。そもそも「前半部=捏造された記憶」をフレッドが必要としたのは、「ありのままの記憶」が耐え難いものであったからではなかったのか。レネエを殺害したことに対する「罪悪感」、そして彼女を失った「喪失感」が彼の内面においてたかまる。だがその一方で、たとえば「前半部」において”現実のレネエの「コントロール不能性」”に事の責を帰そうとしたように、彼は自分の「自我」を保護する本能的欲求をも感じている。だが、当然ながら「現実社会」や「世間一般」がそうした「責任回避」を許さないことは、彼に対して下りた「判決」をみても明らかだろう。

カット(15)に表されるように、フレッドは厳しい「監視/追及」を、そして「閉鎖感」を感じ続けている(「視点」は、直前の「見下ろされるフレッド」の「客観ショット」を経て、また再び「見上げるフレッド」の「主観ショット」へと「対象形」に回帰している)。それは「物理的=外的」なものにとどまらず、彼自身の「内的」なものでもある。そして、それから逃れる術は今の彼にはない……少なくとも、「物理的」な点では。

この陪審員長の声は、ジョン・ウォーターズ作品の常連としてお馴染みのミンク・ストールである。もし裁判場面のシークエンスが残されていれば、彼女がリンチ作品に登場する映像が拝めたかと思うと少し残念だったりする。

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