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2008年12月19日 (金)

「ロスト・ハイウェイ」を観た (22)

連日連夜の忘年会で、断然いい感じに「酔っぱー」な状態が続く大山崎でござーます。和食洋食中華韓国料理と続いて、あと仏蘭西料理と伊太利亜料理と露西亜料理なんかくれば、もはや世界一周を達成しそうな勢いでござーます。まあ、なんつか、このまま引き続き年末年始の「酔っぱーモード」に突入するのはミエミエでありまして、いやー、去年の今頃やってたこととゼーンゼン変わらんとゆーあたり、人間的成長の跡などキレイさっぱりないわけですが(笑)。

……てなことを呟きつつ、「ロスト・ハイウェイ」における「イメージの連鎖」を探る作業である。今回は(0:33:45)から(0:36:01)までをば。

まず指摘しておきたいのは、フレッドとレネエが「アンディの屋敷」から「車中」を経て、「フレッドの家」へと帰る……というシークエンス構造である。これは「後半部」において、ピートとアリスが「アンディの屋敷」でアンディを殺害した後、同じように「車中」を経て(「夜のハイウェイ」と「炎を吸い込む砂漠の小屋」の映像をインサートさせつつ)「砂漠の小屋」へと至るシークエンス構造と「相似形」をなしている(1:49:45)-(1:51:25)。この二つのシークエンスが、いずれも「アンディの屋敷」を起点として、最終的に「フレッドの内面」を表象する「場所」に至るという共通した「構造」をもち、ともに「対置」されるものであることは明らかだ。

そのような事項を踏まえつつ、まずは具体的な映像から追いかけてみよう。

フレッドの家 外部 夜 (0:33:45)
(1)ミドル・ショット。夜の道を近づいてくるフレッドの赤いコンパーチブル。それを追って右へパン。フレッドの家のガレージの前で停車する。
(2)ミドル・ショット。暗闇に沈むフレッドの家の正面の外観。一階途中から二階、屋根の一部まで。窓越しに、二階の内部ではためく光が見える。
[不気味な音]
[ドアが閉まる音]
(3)ミドル・ショット。ガレージの前の赤いコンパーティブル。フレッドが運転席から降りて、ボンネットあたりまで歩いてくる。煙草をくわえ、バッグを持ってドアを開け、助手席から降りようとするレネエ。
フレッド:(ボンネットに両手をつき、慌てたようにレネエに向かって)Hey! Hey!
降りようとしたまま動きを止め、フレッドの方を振り返るレネエ。
フレッド:(ボンネットに身を乗り出し、レネエに)Stay in the car.

カット(1)で注意をひかれるのが、フレッドとレネエが乗る「赤いコンパーティブル」である。前述した”「アンディの屋敷」から「砂漠の小屋」へとピートとアリスが至るシークエンス”をみれば、そこでも「赤いコンパーティブル」が二人の「移動手段」として(あるいは、インサートされる「夜のハイウェイ」の映像が表すように「遁走の手段」として)登場していることが認められるはずだ。この「赤いコンパーティブル」*という「共通項」が、この両シークエンスの「対置性/等価性」されるものであり、後者が前者の「リフレイン」であることを強調する「指標」として機能していることはいうまでもない。

カット(2)は、”「人間の内面」を表すものとしての「家」”というリンチの共通テーマの映像化として、「インランド・エンパイア」の「スミシーの家」と並んで、白眉のものである。暗く闇に沈んだ「家」の内部で、何かが人知れず蠢いている……「フレッドの家」の窓から垣間見える「はためく光」が、外見からは窺い知れない人間の「内面」で沸き起こる「感情」や「思考」の視覚化として現れていることは、もはや改めて指摘する必要もないだろう。我々はこの不気味なメゾンセンにいいしれない不安を覚え、それが表象する「人間の内面」の不透明性/不可視性に慄然とすることになる。

かつ、その「白い光」を「目撃」するのが「フレッド自身」であることが、「ロスト・ハイウェイ」の作品構造を間接的に示唆しているといえる。「自分の家」を「外部」から見ることは、フレッドにとって「自分の内面」を一歩離れたところから「客観視」することに等しい。「到着するビデオ・テープ」のイメージや「コントロール不能な現実のレネエ」のイメージをキーにして進行しつつある”「ありのままの記憶」の蘇生”は、フレッドに「ありのままの自分自身の姿」を想起させる。だが、それも瞬時のことで、フレッドは再び「自分の家」の内部に……自分の「内面」に張り巡らされた「幻想/捏造された記憶」の中へと、再び沈溺していく。

フレッドの家 玄関 内部 夜 (0:34:00)
(4)玄関の内部からのショット。暗闇のなか、左手から玄関のドア、はめ殺しのガラス、壁が見える。はめ殺しのガラスの右手、壁にはアラームの操作パネルが見える。壁の右側上部には、横長の採光窓が二つ見える。玄関のドアが開き、フレッドが入ってくる。フレッドのアップ。上半身だけだけをドアから内部に入れ、右手の壁にあるアラームのスイッチを切るフレッド。そのまま家の内部に入り、画面右手上方、二階の方を見上げる。後ろ手に、玄関のドアを閉めるフレッド。
[ドアが閉まるガチャリという音]

フレッドの家 リビング・ルーム 内部 夜 (0:34:15)
(5)暗闇に沈むリビング・ルームの入り口を、部屋の内部からみるショット。入り口にフレッドが姿を現す。フレッドのバスト・ショット。リビング・ルームの内部を見てから、画面右手のベッド・ルームの方を見るフレッド。彼を追って、少し右へパン。再度、リビング・ルームの方を向き、その内部に足を踏み入れるフレッド。右からのほのかな灯りが彼の姿を浮かび上がらせる。
(6)フレッドの主観ショット。テーブルに置かれた黒い電話機のアップ。
(7)フレッドのアップ。電話機を眺めていたが、背後の闇を振り返る。

フレッドの家 ベッド・ルーム 内部 闇 (0:34:37)
(8)フレッドの主観ショット。左から右へパン。ベッド・ルームに続く通路を進んでいく視点。闇に沈む赤いカーテン。
(9)画面右手から、ベッド・ルームに入ってくるフレッドのアップ。彼を追って左へパン。立ち止まり、やや左に首を傾げて部屋の内部を見るフレッド。やや後退する視点。
(10)ベッドの左横にある小さなテーブルに置かれた黒い電話機と、三角形の金属製灰皿のアップ。
[電話機のベルが鳴り始める]
下方、床を映しつつ右へパンするショット。ベッドの左端が視界に入る。そのまま足の方向へとベッドをなめる視点。
(11)赤いカーテンのアップ。少しカーテンに近付き、それからカーテンに沿って左方向に急激にパンする視点。その先は真っ暗な闇である。
[鳴り続ける電話のベル]
左へのパンは続き、画面左端にフレッドのバスト・ショットを捉える。急速にフレッドにクロース・アップ。画面手前、電話機の方に向き直るフレッド。
[高まる不気味な音楽。鳴りやむ電話のベル]
電話機の方向を見つめているフレッド。脅えたようにあえいでいる。電話機の方を見たまま入り口に引き返し始め、やがて入り口の闇を見る。そのまま入り口の方に向かい、闇に消え去るフレッド。

カット(3)でレネエにその場に留まるように告げたあと、カット(4)においてフレッドは自分の「家」の内部に進入する。ナラティヴな理解にストレートに基づけば、このフレッドの行動は家の内部にいるかもしれない「誰か」……「アンディの屋敷」から「ミステリー・マン」の携帯電話を使って会話を交わした「誰か」が、今なお家の中に存在することを危惧しての行動だということになる。だが、あくまで「イメージの連鎖」上に一連のフレッドの行動を捉えるなら、また違ったコンテキストが成立することに気づく。それは、やはり、彼の”「ありのままの記憶」の蘇生”につながるものだ。

上述したように、彼の「家」の内部にあるもの……たとえば彼が「現実のレネエ」に対して抱いている/抱いていた「感情」は、彼にとって「否定すべき対象」であり、それがゆえに「隠匿」され、自分自身の「感情」ではないものと見なされている。「ミステリー・マン=真の声」という「他者」が「幻想/捏造された記憶」のなかに喚起されたのはそれ故であるし、「ミステリー・マン」が招かれ「フレッドの家」にも存在したこともこの理由による。当然ながら、フレッドは「現実のレネエ」に対する「感情」を糊塗しなくてはならない。ましてや、「幻想のレネエ」に「彼の家の内部にあるもの=自分の感情」を見せることなどできない。彼が彼女を「家」の外部に押しとどめるのは、まさにそのためだ。

家の内部に入ったフレッドの「視線」の先には、やはり「電話」が姿を現す。カット(6)あるいはカット(10)の「主観ショット」において、「フレッドの家=フレッドの内面」と「外部」とを間接的につなぐ手段としてこれまで何度も登場した「電話」が、またしてもクローズ・アップで提示される。これまたナラティヴに捉えるなら、こ「電話機」を強調した映像は、「アンディの屋敷」からフレッドが「携帯電話」で会話した者の「存在」を、あらためて受容者に想起させるものとして機能している。しかし、フレッドが自分の「家」へと……自らの「幻想/捏造された記憶」へと回帰したと捉えたとき、この「電話」の映像が指し示すものもまた、異なったコンテキスト上に置かれることになる。その端的な現われが、カット(10)において鳴り始める「ベッド・ルーム」の「電話」である。これは果たして誰が、どこからかけているものなのか? 

これまでも何度か「電話」や「インターフォン」という「間接的手段」で「フレッドの内面」が「外界」と接触する映像が提示されてきた。「幻想/捏造された記憶」のなかでは、それが指し示すものが結局フレッドの「自問自答」であると考えられることに基づくなら(そして、後にそれを端的に表す映像が提示されることを踏まえるなら)、このシークエンスの「かかってくる電話」の先にいる「存在」が何者であるかもまた、自ずと了解される。おそらくは、それもまた「フレッド自身」に他ならない。であるならば、これもまた「ミステリー・マン」が「アンディの屋敷」と「フレッドの家」の両方に、同時に存在した映像の「リフレイン」であり、「ヴァリエーション」である。フレッドがこの「電話のベル」に応えられず、カット(11)にみられるような脅えた表情を浮かべるのは、そのためだ。彼は、どこかでこの「電話」が誰からかかってきたものかを了解している。それがために、彼はこの「電話」に出ることができないである。

こうした視点に立ったとき、カット(11)の「赤いカーテン」から「闇」へ、そしてフレッドのアップへのパン、そして彼に向かって急激にクロース・アップする映像は非常に興味深いものとなる。「ロスト・ハイウェイ」では、「赤いカーテン」は「ベッド・ルーム」と緊密に関係づけられ、これがフレッドの「家=内面」に関連するものであること……それも、もっとも「核」となる「奥深い場所」につながっていることを示唆している。かつ、その次に提示されるのが「底知れぬ闇」であり、フレッドの「感情」……いいしれぬ「不安」と絶望的な「現実との断絶」を表象する。そして、その「視点」が最後に到達するのがフレッド自身の姿であり、彼がその「中心」であること……「赤いカーテン」と「闇」と「彼」が「関連づけられるもの」であることが、彼に向かってクロース・アップしていく「視点」によって強調されるのだ。

フレッドの家の前 外部 夜 (0:35:24)
(12)フレッドの家の前のロング・ショット。ガレージから玄関への階段、玄関を収めるショット。画面左のガレージの前には、フレッドの赤いコンパーチブルが停車している。画面右の玄関の外灯は灯っており、階段とその周辺までを照らしている。階段の下には、ややふらつき気味のレネエが立っている。玄関のドアが開いてフレッドが出てくるのを見て、レネエは階段を上り始める。ドアを開け放したまま、フレッドも階段を下り始める。
フレッド:(レネエに右手の人差し指を突きつけながら) I told you to stay in the car!
レネエ:(階段を上りながら)Why?(それでも二段上ったところで立ち止まる)What is it?
フレッドは階段の中ほどで立ち止まり、一瞬、背後の開いたままの玄関のドアを振り返る。階段の途中の壁に、その上辺に左腕を乗せてもたれかかるレネエ。
レネエ: Why did you make me stay out here? Hmm?
ゆっくりと二人にクロース・アップ。
フレッド:(レネエを見下ろしながら)I'll tell you why: because I thought someone was inside the house.
レネエ:(しばらくフレッドを見つめてから)Was there?
なおもゆっくりと二人にクロース・アップしていく視点。
フレッド: No. Of course not.
踵を返し、玄関へと階段を上るフレッド。レネエも彼を追って階段を上り始める。ドアが開け放たれた玄関の脇に立って、レネエが上がってくるのを待つフレッド。
(ディゾルヴ)

結局、フレッドは「家」の「内部」に侵入者を発見できずに終わる。それは、カット(12)でフレッドがいうように、まったく当然なことだ。彼の「家」が彼自身の「内面」を表している限りにおいて、本当の意味でそこに「存在」しているのは「フレッド」と、彼の「真の声」である「ミステリー・マン」のみなのだから。

レネエは彼の言葉に従わず、自動車から降りてきてしまっている。それが彼女がエスカレートさせる「コントロールの不能性」を表していることは、もはや指摘するまでもないだろう。この後、”「ありのままの記憶」の蘇生”は一挙に進み、「前半部」の終結に向けて「イメージの連鎖」は大きくジャンプすることになる。


*
(0:32:27)と(1:57:03)の映像に現れるフロント・グリルの形状を見る限り、この二台はともに「赤いコンパーティブル」ではあっても、同一の車種ではない。

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