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2008年11月25日 (火)

「ロスト・ハイウェイ」を観た (16)

んー? もうダメだと思って放置してたLinux2号機が、なんかいつの間にか復活してるんですが(笑)。起動時にいろいろエラーを吐いた挙げ句、Xを起動し損ねてコマンド・ラインに落ちたりなんかなさいましたけど、再起動したらば無事に立ち上がって下さって、もう何がなんだか(笑)。「三時間の連続使用テスト」×3セットを行った範囲では、突然電源が落ちたりという症状も出てなくって、ナニごともなかったかのように動いております。あらー? なにか安いNetbookでも買ってやろうかと思ってたのに、こ、口実がなくなってしまいました(笑)。

てなわけで、いつ落っこちてもいいようにコマメにUSBメモリにバックアップをとりつつ(笑)、「ロスト・ハイウェイ」における「イメージの連鎖」話である。今回および次回は、(0:22:34)から(0:27:19)までについてのありゃこりゃ。

では、毎度お馴染み、具体的な映像から。

フレッドの家 リビング・ルーム 内部  (0:22:34) 
(1)モニター画面のクロース・アップ。荒い走査線が浮かぶモノクロの映像。フレッドの家の内部、ベッド・ルームへと続く通路を進む視点。 
(2)ミドル・ショット。リビング・ルームの長ソファに座っている二人の刑事。左に座った刑事は明るいグレーのスーツを着て、黒髪、口髭を生やした小太りの男(アル)である。右に座った警部はダーク・グレーのスーツを着た痩せぎすの男(エド)である。彼らはモニターに映し出される映像を観ている。 後退する視点。アルの右側に座ったレネエとフレッドが見えてくる。レネエは濃い茶色のドレスに着替え、黒のパンプスをはき、足を組んでいる。フレッドは黒いセーターにジーンズをはき、右膝を立ててそこに左腕の二の腕あたりを載せている。 
(3)モニター画面のクロース・アップ。右回りに回りながらベッド・ルームに侵入していく視点。
[不気味な音楽]
ベッドで寝ているレネエとフレッドを高い位置から映し出し、画面は雑音とともにブランクになる。 
(4)ミドル・ショット。リビング・ルームの長ソファに座っている四人。レネエは背もたれに背をもたせかけ、腕を組む。顔を見合わせる二人の刑事。彼らを見守るレネエとフレッド。
フレッド: (再びモニターの方を見ながら)That's it.
フレッドとレネエを見る二人の刑事。テープの映像を撮影したカメラの位置を確かめるように上方を仰ぎ見るエド。
エド: (アルの方を見ながら)What do you think?
手を広げ、首を振るアル。
アル: (立ち上がりながら)I really don't know.
立ち上がったアルは、天井の方を仰ぎ見ながら部屋の中央まで歩み出る。それに連れて上方にパン。白い陽光が入ってくる天井の採光窓が画面上方に見えてくる。なおも右方に歩き、画面に背中を見せるエド。そのままくるりと回り、部屋の中央を向きながらなおも上方を見上げるアル。下にパン。長ソファに座ったままのエドとレネエとフレッドが視界に入ってくる。アルの姿は腹部から膝の上あたりまでしか見えない。そのまま軽く手を広げてみせるアル。
エド: (膝に手をあて、長ソファから立ち上がりながら)Let's check the hallway and the bedroom.
立ち上がるエドを見て、レネエも組んでいた足を解き、立ち上がる。立ち上がりながら誘うようにフレッドを見るレネエ。それに応えてフレッドも立ち上がる。画面左手に向かって歩き抱す四人。それを追って左にパンするショット。エド、アル、レネエ、フレッドの順で通路へと向かう。歩きながら、天井を見上げ、腕を組むレネエ。同じく天井を見上げながら最後尾を歩くフレッド。部屋を出て、通路を右に折れる四人の後ろ姿。

レネエの「電話」によって、二人の刑事が「フレッドの家」を訪れる。以前にも述べたように、「外界」から「フレッドの家」の内部に入り込み、「直接的な接触」を行うのはこの「二人の刑事」だけである。他はすべて「電話」や「いつの間にか配送されるビデオ・テープ」といった「間接的な接触」ばかりだ。

(0:40:49)からのシークエンスから推察されるように、事件後、逮捕されたフレッドに対する取り調べはこの二人の刑事によって行われている。明らかにフレッドはそうした「記憶」に基づき、「現実の刑事たち」を「モデル」にして登場する刑事たちを創り上げているのである……ちょうど、「現実のレネエ」を「モデル=原型」として前半部の「レネエ」を創り、後半部の「アリス」を創り上げるように。「レネエ」や「アリス」と同じく、彼らもまたフレッドによる「幻想/捏造された記憶」の一部なのだ。

だが、刑事たちに付随する「監視/追求」のイメージは、問題の「ビデオ・テープ」の性格を明らかにする。カット(4)で刑事たちが指摘する、二本目のビデオ・テープに録画されている「家の内部」の映像が、普通では撮れないような高い位置から撮影されているという「事実」だ。当然ながら、刑事たちがフレッドの「幻想/捏造された記憶」の一部である以上、彼らもフレッドの「代弁者/代行者」として機能する。刑事たちが指摘するように、「ビデオ・テープ」に収録された映像が「通常」ではない……あるいは「ビデオ・テープ」そのものが具象的なものではない……たとえば「ありのままの記憶」といった抽象的かつ象徴的なものであることを、フレッド自身は免れようもなく、意識のどこかで「認識」しているのである。たとえ「どう思う?」「さっぱりわからんな」と刑事たちが「代弁」するように、それが表わすものがフレッドには明瞭に理解できなかったとしてもだ。

続いて、刑事たちは「家」の内部を……「事件」の核心部分が発生した場所であり、もっともフレッドのプライヴェートな場所である「ベッド・ルーム」を調べようとする。後にもっと明確な形で現れるが、”「フレッドの内面」を表わすものとしての「フレッドの家」”という観点に立ったとき、刑事たちのこの「探索行為」もまた「表現主義的かつ象徴的なもの」として理解されることになる。そして、その「モデル=原型」となっているのは、これもまたおそらくは刑事たちに受けた「取り調べ」の「記憶」である。フレッドへの「取り調べ」は彼の「内面」まで侵入し、その心の奥に潜むものまで探り出すような厳しいものであったわけだ。

その「ベッド・ルーム」を舞台にしたシークエンスにおいて、刑事たちは「フレッドの内面」にあるものを厳しく問い質し、作品全体のキーとなる数々の「言及」を引き出すことに成功する。もちろん、それもまた、もともと「フレッドの意識」のどこかに存在したものだ。

フレッドの家 ベッド・ルーム 内部 朝 (0:23:20)
(5)ガムを噛みつつ、あたりを見回しながら薄暗い通路から明るいベッド・ルームに入るエド。歩くエドよりも早く、部屋の左奥、画面手前に向かって後退する視点。エドのアップからミドル・ショットまで。エドの左手には大きな窓があり、明るい外部の光景が見える。左の壁には、インターフォンの金属プレートが見える。あたりを見回しながらベッド・ルームに入るエドに続いて、アルも左右を見ながら入ってくる。一瞬、左を振り返って窓の外を見るエド。次いでフレッドもベッド・ルームに入ってくる。なおも後退する視線。腕を組んだレネエも視界に入ってきて、フレッドの右背後に、入り口の壁にもたれるようにして立つ。左から、フレッド、レネエ、アル、エドの順でベッド・ルームの中に立つ四人。体の前で手を組むアル、ズボンのポケットに手を突っ込むエド。
アル: (フレッドに)This is the bedroom?
沈黙する四人。
アル: You sleep here, in this room, both of you?
落ち着かなげなフレッドとレネエ。 
(6)ミドル・ショット。アルの背後、窓あたりからの、やや高い位置からのショット。画面右にアルの背中と薄くなった後頭部が見える。その向こうアルの左の肩ごしにフレッド、右の肩ごしに入り口にもたれたレネエが見える。エドは画面の左にほとんど見切れている。アルとエドの間に、黒いカバーがかけられ、黒い枕が木製のヘッドにもたせ掛けられたベッドが見える。ベッドの右枕元には低いテーブルが置かれ、円筒形の傘の低い電気スタンドが載せられているのが見える。そのなお右には裏に通路のある壁があり、壁には鏡が掛けられている。
フレッド: (ベッドの方に右手を振り、アルに向かって)This is our bedroom.
何度もうなずくアル。 
(7)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。顔を見合わせるフレッドとレネエ。 
(8)バスト・ショット。フレッドたちの方向からのアルとエドのルー・ショット。アルの背後の窓からは陽光に輝く木々といった外部の光景がみえる。
エド: (左手を振りながら)There's no other bedroom? 
(9)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。視線を落とすフレッド。腕を組んだまま刑事たちの方を見ているレネエ。
フレッド: (刑事たちを見て)No.
フレッドのほうを見るレネエ。
フレッド: (レネエの方を見ながら)I mean, I use it as a practice room. It's soundproof. 

ベッド・ルームにまで足を踏み込んだ刑事たちに対して、フレッドも、そして彼の「代弁者/代行者」であるレネエも落ち着かなげな態度をとる。この「刑事たち」の「モデル/原型」に「取り調べ」を受けたフレッドにとって、彼らはその際に抱いた「感情」を想起させるものであるからだ。そして、当然ながら、この「幻想/捏造された記憶」のなかでも、その「取り調べ」は形を変えて「リフレイン」される。

また、映像的には、フレッドとレネエがベッド・ルームの「奥」に立ち、刑事たちが「外界」が見える「窓際」に立つというこのシークエンスを通して採用されている「構図」も、非常に興味深いものだといえる。フレッドにとって「刑事たち」は自分の「内面」に対する「外界」から「侵入者」であり、彼らは背後の窓越しに見える「外界」のイメージと明確に紐付けられるのだ。それに対し、フレッドとレネエの背後にあるのは、閉塞的な「壁」と、「外界」と間接的な関係しかもてない「インターフォン」である。彼我の「立場」の対比は、映像的に明瞭だ。

カット(8)において、アルは「ベッド・ルームはここだけか?」と尋ねる。この質問は、カット(17)でフレッドから、「練習場所」として使われている”「もうひとつのベッド・ルーム」の存在”に関する言及を引き出す。(0:06:52)からの「ルナ・ラウンジ」におけるフレッドの演奏が彼の「心の叫び」として理解されることを考えるとき、「もうひとつのベッド・ルーム」が彼の「練習スタジオ」として使われていることは非常に示唆的である。そこは彼の「ミュージシャン」としての「根元的な場所」であり、当然ながら現在舞台となっている「ベッド・ルーム」と同様に「非常に私的な場所」だといえるからだ。刑事たちの「追求」(のイメージ)は、我々=受容者が知らなかった事実を……作品が提示してこなかった事実をもフレッドから引き出し、明らかにするのである。

(10)バスト・ショット。フレッドたちの方向からのアルとエドのルー・ショット。
アル: you're musician? 
(11)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。
フレッド: Yeah. 
(12)バスト・ショット。フレッドたちの方向からのアルとエドのルー・ショット。
エド: What's your axe?
フレッド: (画面外から)Tenor. 
(13)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。
フレッド: Tenor saxophone...Do you? 
(14)バスト・ショット。フレッドたちの方向からのアルとエドのルー・ショット。
エド: (笑いながら右手の人差し指で自分の耳を指差して)No. Tone deaf.
アル: Do you own a video camera?
レネエ: (画面外から)No. 
(15)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。画面右の方に顔を背けるフレッド。レネエはフレッドの方を見る。
レネエ: Fred hates them.
振り返り、刑事たちの方を見るフレッド。 
(16)バスト・ショット。フレッドたちの方向からのアルとエドのルー・ショット。黙ったまま、フレッドとレネエを見守る二人の刑事。ガムを噛み続けるエド。 
(17)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。刑事たちの方を見ている。
フレッド: (意を決したように)I like to remember things my own way. 
(18)バスト・ショット。フレッドたちの方向からのアルとエドのルー・ショット。一瞬、面食らう二人。
アル: What do you mean by that? 
(19)バスト・ショット。ベッドの方からのフレッドとレネエのツー・ショット。視線を落とすレネエ。
フレッド: How I remenbered them.
レネエも刑事たちの方を見る。
フレッド: Not ncessarily the way they happened. 

次いで、カット(14)において、アルは「ビデオ・カメラを持っているか?」という決定的な質問をする。だが、フレッドは、この質問に答えたくない。カット(15)の「顔を背ける行為」に表れるように、彼は文字どおり「現実」に「直面」することを恐れており、この質問を回避する。そのため、「ない」と答えるのは「代弁者/代行者」であるレネエだ。ところが、それだけにとどまらず、彼女は「フレッドが嫌いだから」と付け加える。もちろん、このレネエの発言も基本的にフレッドの「感情」を「代弁」するものである。何よりも「ビデオ・カメラ=ありのままを記録するもの」を忌避しているのは、「主体」である彼自身であるからだ。だが、これは彼にとって「隠しておきたい事実」であり、それを明らかにするレネエの行為は、フレッドにとってはコントロールを「逸脱」したものに他ならない。

結果として、フレッドはカット(16)において刑事たちから「無言の追求」を受ける。レネエによる「代弁」が不可能になったフレッドには、自分自身で答えるしかない。彼は「自分が好きなように記憶していたいから」と言い、「どういう意味か」と問う刑事たちに対し、続けて「記憶する方法の話だ」「実際に起こった通りに記憶しなければならないわけではない」と言及する。普通に考えるなら、「ビデオ・カメラが嫌いな理由」の説明としてはこれはかなり異質なものといわざるを得ない。だが、それが意味するところの「抽象性」を考えるなら、これらの「言及」は作品の全体構造の非常に端的な説明だ。

繰り返し述べるように、フレッドにとって、「レネエ殺害」に関する「ありのままの記憶」は「忌避」すべき対象である。なぜなら、それは彼に「罪悪感」を感じさせて彼の自我を傷つけるとともに、自らが「追求/懲罰」の対象であることを認識させるばかりでなく、自分の「レネエに対する希求」がもはや実現不可能であることまでも明確にしてしまうものだからだ。そうした事態を回避するために、フレッドは、前半部においてはレネエが変わりなく「存在」しているという「幻想/記憶」を捏造し、後半部ではピートという「別人格」を核にした「幻想/記憶」を創造して心理的に「遁走」する。その内容は「実際に起こったとおりでなく」「自分が好きなように」フレッが歪めたものだが、彼がそれを「現実=短期の記憶」と捉えている限りにおいて、彼にとってはこれが唯一の「現実」なのである。

フレッドの「ありのままの記憶」に対する「忌避」は、「ありのまま」を記録する「ビデオ・カメラ」あるいは「ビデオ・テープ」にその対象を「転化」させる。彼が「ビデオ・カメラ」を嫌うのは、こうした機序によるものである。このようにして、彼の「家」に届く「ビデオ・テープ」は、「ありのままの記憶」そのものを表す「象徴」として位置づけられることになる。

(この項、続く)

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