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2008年3月 5日 (水)

「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (59)

ふわわ。諸般の事情があって文章の作成環境を変えてみたら、文章量の感覚が狂ってしまった大山崎でございます。大昔のDOS版モバイルギアなんか引きずり出してみたりなんかして、ホット・カーペットに寝っ転がって、うつ伏せになったり仰向けになったりしてキー・ボードを叩いていると、なんか七輪で焼かれているサンマになったよーな気分であります(笑)。ってなことを書くと、後ろからサンマにテトラポットで殴られ……。

……というようなどーでもいい話はさておき、相も変わらずな感じで「インランド・エンパイア」における「イメージの連鎖」をば追いかけることにする。「インランド・エンパイアを観た(X回目)(58)」からの続きということで、(2:05:17)から(2:06:25)までを落穂拾いな感じでいってみせう。

……の前に、このシークエンスでウサギたちが交わす会話を念の為に、再引用しておこう。

ジェーン・ラビット: (ジャック・ラビットに) I am going to find out one day.
スージー・ラビット: (手を休め、二匹を振り返って) It was red.
ジャック・ラビット: (ジェーン・ラビットを見て) Where was I?
ジェーン・ラビット: This isn't the way it was.
ジャック・ラビット: (立ち上がってジーイン・ラビットを見下ろしながら、変調した声で) It was the man in the green coat.
スージー・ラビット: It had something to do with the telling of time. (変調した声で)

あえて付け加えるなら、スージー・ラビットによる「赤だった(It was red)」という同じ台詞が、前々々回で触れた「バルト海地方の家」のシークエンスでは、老人2によって発せられていることに留意しておきたい。老人2がスージー・ラビットに変貌したことはこのシークエンスの頭において映像として明示されているが、両者の「同一性」「等価性」はこの台詞によっても明確に表されている。

また、「私はどこにいるのか?(Where am I?)」というジャック・ラビットの「場所に対する見当識を失った」発言に関しては、(0:04:04)からの「Rabbitsの部屋」において、すでにジェーン・ラビットによって……

ジェーン・ラビット: What time is it?

……という「時間に対する見当識を失った」発言がなされていることを指摘しておきたい。「インランド・エンパイア」に繰り返し登場する「見当識の喪失」を表すこの発言として、このジャック・ラビットとジェーン・ラビットの発言はセットになっているとも捉えられる。だが、同時に、このシークエンスにおいて「それは時刻を告げるものと関係があった(It had something to do with the telling of time)」とスージー・ラビットが発言していることも見逃せない。もちろんこの発言が作中に何度か登場する「(腕)時計」のことを指しているのは明瞭であり、つまりは「時間のコントロール」のイメージに関する発言であることはいうまでもない。他の登場人物たちと同様に「混乱」を抱えたとしても、ウサギたちはこのように自らの「錯誤」を認識する術を持ち、それを修正可能であるのだ。ジャック・ラビットの「場所に対する見当識の失当」がリカバーされることを表す発言は見当たらないが、おそらくは彼らはそれに対する修正を行う能力を備えているはずだ。

もうひとつ、この(0:04:04)からの「Rabbitsの部屋」との関連性を挙げるなら……

ジェーン・ラビット: I am going to find out one day.

……このジェーン・ラビットによる発言が、彼・彼女らの「会話」の皮切りとして、どちらの「Rabbitsの部屋」でもされていることが指摘できる。「インランド・エンパイア」には何度か「Rabbitsの部屋」が登場するが、ウサギたちの会話が行われるのは(0:04:04)からのものと、現在触れているシークエンスのみである。つまり、会話が発生している「Rabbitsの部屋」において、その会話はどちらもこのジェインラビットの発言によってスタートしていることになるわけだ。となると、この発言がなんらかの「キーワード」になっている可能性は否定できないだろう。「いつか見つけるつもりだ」……ウサギたちがいったい何を見つけようとしているのかは明瞭ではない。それは「なにかの混乱の解決」であるのか、あるいは「まったく新しい境地への到達」であるのか? が、むしろ問題となるのは、彼らが何らかの「希求」するものを持っているということなのだ、とここでは捉えておきたい。そしてそれは「Rabbitsの部屋」において行われている行為、あるいはそこで起きている事象に関係している。あえていうなら、これはウサギたちの「決意表明」であり、ひいては映画製作に携わる者としてのリンチ自身の「決意表明」ではないのだろうか? リンチは自分自身もまた「動物=他者のコントロールを受け、かつ自律しているもの」として捉えており……というより作品中に現れる「動物が表すもの」のイメージはそうしたリンチ自身の感情を出発点としており、それが(文字通り「動物」である)ウサギたちに投影されているのではないだろうか?

しかし、ジェーン・ラビットが言う「前はこんなじゃなかった(This isn't the way it was)」というのは、何を指しているのだろう? 肯定的な発言なのか、否定的な発言なのか。以前の「コントロールの対象」がこんなではなかったということなのか、それとも現在の「コントロールの対象」の範疇の話なのか。後者であるならば、これまた現在の「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」のエスカレーションの状態を表すものと読み取ることが可能だろう。

ジャック・ラビットの「緑色のコートを着た男だ(It was the man in the green coat)」という発言が、「スミシーの家」へと逃げ込むニッキー=スーを窓越しに見詰めている緑色のコート*を着たピオトルケ(1:03:20)のことを指しているのは間違いない。その後「スミシーの家」に入り込んだニッキー=スーが、そのベッド・ルームで就寝するピオトルケが脱いでいるのは、やはりその緑色のコートである(1:08:03)。当然ながらこの発言は「ピストル=物語展開の要請」がピオトルケによって「スミシーの家」に持ち込まれたことを想定してのものであり、それはこの後、緑色のコートが「スミシーの家」のベッド・ルームにあるクローゼットの引き出しの中で、置かれていたピストルの下から姿を現わすこと(2:40:54)からも明瞭である。彼らは自分たちの「行動」の意味に自覚的であるし、それによって発生する事態にも予測ができていることが、この発言からもうかがえる。赤や青と異なって、緑がモチーフとして使われているのはこのコートにおいてのみであり、そういう意味では「ユニーク」な色であるといえる。あえていうなら、ピオトルケという「トラブルの根源」に付随するイメージを表すものと捉えることも可能かもしれない。

また、ジャック・ラビットのこの発言の直前から「Rabbitsの部屋」の照明は「赤」に変わっており、以降、ウサギたちの声は「変調」がかかったようになる。前々々回述べた「カット割り」とあわせて、「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」および「インランド・エンパイア」自体の「状況の変化」は、このような表現によっても表されているといえるだろう。そうした「状況の変化」を表しつつ、「Rabbitsの部屋」の奥の壁にある窓越しに撮られた「赤いシェードの電気スタンド」のアップで、このシークエンスは、終わる。このランプが「スミシーの家」に登場するランプと同一のものであるかどうかは、やはり明瞭ではないが、その「機能」するところは「同一」と考えていいだろう。すべてを「赤=物語展開への要請」に塗りつぶしながら、「スクリュー・ドライバー=最終的な心理展開の要請」と「ピストル=最終的な物語展開の要請」の両方が揃い、もはや時刻も「真夜中」を過ぎたいま、「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」は最終的な局面に向けて激しく動き始めている……ウサギたち、演技者=ニッキー、受容者=ロスト・ガールの三者に、等しく「共有」されながら。

*おそらくは、「リンチ1」のなかで、リンチが自分で緑色に染めていたコートだ。

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