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2007年11月14日 (水)

「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (21)

」と「」の続き。

こうした受容者・演技者・登場人物の「心理状態」の反映としての「青」は、「スミシーの家」の内部における「青」と「赤」の出現シーンにおいて端的に表れている。

もっともキーになるであろうと思われるのは、「スミシーの家」にスーが初めて足を踏み入れた直後、ベッドで就寝しようとするピオトルケを目にした後に続くシークエンスだ(1:07:59-1:12:43)。夫の抽象概念=ピオトルケを発端として、スーがロコモーション・ガールたちを幻視した後、ポーランドの「ストリート」へと誘われる一連のシークエンスである。このシークエンスが登場人物=スーの(ひいては彼女に「同一化」している演技者=ニッキーと受容者=ロスト・ガールの)心理状態の変遷であることは、以前にも述べたとおりだが、ここでは対置されるものとしての「青」と「赤」をキーにして、もう少し詳細にみてみよう。

就寝したピオトルケを観た(幻視した?)あと、誰も居ないリビング・ルームのカットを経て、スーはリビング・ルームの隣の小部屋に入る。このカットにおいてすでにこの小部屋の内部が赤い光によって照らされているのが確認できる。光源はその部屋にある赤いシェードの電気スタンドである。「撮影現場におけるビリー」のインサート・カットをディゾルヴで挟みつつ、この赤い電気スタンドは明滅する。このシークエンスはスーのアップのカットと交互に提示され、赤い電気スタンドのカットはスーの主観ショットであることも同時に提示されている。一段と光量を増した赤い電気スタンドのカットとそれに伴うクラック・ノイズのあと、映像は青い裸電球のアップへと切り替わる。そのままカメラが引かれると、そこには「ロコモーション・ガールたち」がたむろしている部屋だ。この「ロコモーション・ガール」たちとの始めての邂逅を経て、スーはポーランドの「ストリート」へと誘われていく……。

この「赤」から「青」への推移は、「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」というナラティヴな作品が持つ「物語展開と心理展開の連動性」を表わしている……とここでは捉えておきたい。つまり、「物語上のエスカレーション」が「心理上のエスカレーション」に置き換わる瞬間である。そして、もちろん、そうした「置換」を喚起するのは「映画=世界」自体であり、「置換」そのものが発生するのは「スミシーの家」によって表わされる「人間の内面」においてだ。

だが、この「推移」あるいは「置換」は双方向性だ。「物語上のエスカレーション」が次の「物語上のエスカレーション」を連鎖的に喚起するように、「心理的エスカレーション」は次の「心理的エスカレーション」を喚起する。「物語」と「心理」が連動している限り、ある「物語上のエスカレーション」は次の「心理的エスカレーション」を喚起し、ある「心理的エスカレーション」は次の「物語上のエスカレーション」を喚起することになる。

「色」の問題からちょっと離れて、こうした「心理的エスカレーション」と「物語上のエスカレーション」の二つが、互いに互いを喚起してることを表わしていると思われるシークエンスを拾い出してみよう。

発端は「ピオトルケに妊娠を告げるスー」(1:29:26)のシークエンスである。ピオトルケの冷たい反応は、暗い部屋で輪になって踊る「ロコモーション・ガール=心理的エスカレーション」のカットを喚起する(1:31:16)。「スミシーの家」のベッドルームにおける「ピオトルケとスーの同衾」のカットを経て、スーがベッドを抜け出しリビングルームでビリーに電話を架けるシークエンスへとつながる。しかし、この架電は「Rabbitsの部屋=物語上のエスカレーション」にある電話につながり、ジャック・ラビットによって受け取られる。つまり、ここでは「心理的エスカレーション」が「物語上のエスカレーション」を呼び出し、その展開を進めることを喚起し要請している。

そして、その「要請」は応じられる。「Rabbitsの部屋」に通じる電話のシーンは、「シルクの布に開けれた穴」をを覗く主観ショットをはさんで、最終的に「Mr.Kのオフィス」におけるスーの「告白タイム」という効率性の高い「物語展開」のシークエンスへとつながっていく。「心理的エスカレーション」による「物語上のエスカレーション」への要請は、聞き届けられたのだ。

(この項、もうちょい続く)

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