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2007年10月18日 (木)

「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (9)

行き当たりばったりに続いたりなんかした(笑)。

さて、では、これに「ロコモーション・ガールたち」や「ファントム」や「ウサギたち」はどうからんでくるのか? 

……について述べる前に、以前述べた「ナラティヴな作品」における物語展開と心理展開の連動性をば、ちょいと思い出してほしい。要するに、物語のエスカレーションと連動させて登場人物の心理的エスカレーションを描くのが、大多数の「ナラティヴなもの」が持つ基本構造であるということだ。そして登場人物に「感情移入=同一化」した受容者は、その心理的エスカレーションを登場人物と「共有」する。ここでは「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」(という「映画=世界」の抽象概念?)も、こうした「ナラティヴな作品の基本構造」を備えていると想定して話を進めることにする。

で、前項で挙げた模式図は、「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」における「心理的エスカレーション」の状態を表わしたものであるといえる。当然ながら、これは本来「動的」なものであって「静的」なものではない。物語の展開軸に沿って時系列的に形成が進み、かつ状態が変動するものであって、前項の図はその最終形態を静的に模式化したものと理解してもらったほうがいいと思う。

たとえば、ロスト・ガールの「感情移入=同一化」の形成を映像に沿ってたどるとき、彼女が「スミシーの家」を共有するのは作品の最終局面となる「スミシー一家の邂逅」(2:49:38)においてになる。それ以前の段階では、「ポーランド・サイド」から真っ直ぐ「ストリート」まで至る様子しか映像としては提示されていない。模式図においてロスト・ガールの縦軸がああいう形状をしているのは、そうした理由からだ。最終的にロスト・ガールも「スミシーの家」を共有するに至るわけだが、これは「映画=世界」に触れ、スーとの「同一化」を果たした受容者であるロスト・ガールが、その「体験」を経て変容したことを表わす映像表現であるという捉え方が可能であるように思える。

毎度ながら前置きが長くてアレなんで、ずばっといく(笑)、このモデルを踏まえて捉えたとき、「ファントム」と「ロコモーション・ガール」によって表わされるものが働きかけているのは、「ON HIGH IN THE BLUE TOMORROWS」の心理的エスカレーションに対してである。その一方、物語上のエスカレーションに対して働きかけているのが、「(老人たちやMr.Kを含む)ウサギたち」として表わされるものたちだ。

端的にいうと、受容者=ロスト・ガールの心理的状況が「ストリート」に至る「同一化」の起因になり、かつその深化を進めているのがファントムという「映画の魔(法)」である。ロスト・ガールの心象風景としての「ポーランド・サイド」における彼女の「トラブル」が、なぜ「夫の抽象概念」であるピオトルケではなくファントムを夫として描かれているのか(あるいはなぜファントムがピオトルケの立場に成り代わっているのか)……とりあえずはこの捉え方で、それなりの納得ができるように思う。

そもそも「インランド・エンパイア」の開巻直後、豪華な部屋において、ファントムと禿頭の老人の間で交わされた会話を思い出してみよう(0:07:29)。

老人: Are you looking to go in?
ファントム: (苛立って) Yes.
老人: An opening?
ファントム: I look for an opening. Do you understand?

ここでファントムが「入りたがっている(look to go in)」対象は、「映画=世界」のことである……とここでは捉えておきたい。そしてこのコンテキストに基づくなら、ファントムが言う「opening」は「開口部」というよりも、むしろ「『映画=世界』の開幕」を意味していることになるだろう。いずれにせよ、こうして「映画=世界」に入り込んだファントムは、受容者=ロスト・ガールの意識に働きかけて彼女の「感情移入=同一化」を引き起こすとともに、その深化を促すべく機能することになる。これまたいろいろな意味で、彼はロスト・ガールを「ストリート」へと突き落とすのだ。

(うう……まだ続くぞ、これ)

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