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2007年9月24日 (月)

「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (1)

確認のためにDVDでチョコチョコ細かく特定のシーンを見返したりして、もう何回観たかよくわからなくなったんで、もう回数はいいや(笑)。今回は編集面での細かい点についてなんで、割とあからさまな話になります。そーゆーのヤな人はパスしてください。

さて、作中で、明確に「登場人物の混乱」を意図した編集が行われているシーンが2個所ある。

ひとつはタイム・スタンプでいうと(0:57:40)あたり、「スミシーの家」のベッド・ルームでニッキーとデヴォンが行為に及んでいるシーン。このシーンにおける台詞を追っている限り、ニッキーは終始ニッキーとしてのアイデンティティを保っているが、逆にデヴォンの方は自分がビリーを演じている意識でいるのがわかる。ただし、この混乱が台詞によって明らかになるのはかなり二人の会話が進んでからであり、それまでは観客の方はこれのシーンが(映画内の)現実であるのか、それとも撮影風景であるのか、まったく判然としない。

ただし、この「混乱の存在」が明らかになった後でも、まだ混乱は続く。このシーンが、2シーン前のシーンでそうであったように、単純にニッキーが撮影現場で自分のアイデンティティを混乱させているだけで、デヴォンの意識が正しいかというとそれも定かではない。なぜなら、撮影スタッフや「(プロップの方の)撮影カメラ」が映像として提示されないからだ。その代わりにそこに存在し、あたかも撮影カメラのような機能をはたしているのは、「Piotrekの主観視点(Point Of View)」である。ということは、このシーン全体が実は「ニッキーの主観」によって歪められたものであり、ニッキーによるスーへの「感情移入」や「同一化」が深化していることを表すシーンとして、一応の理解が可能だろう。

もうひとつの問題にシーンは2回目の「Axxon N.」の出現シーンのあたり、娼婦ヴァージョンのスーが通りの向こうに他の娼婦たちと一緒にいるのを目撃するカットからの一連のシークエンスである。ここでは便宜上、登場順に従って、目撃される方のスーをスー(A)、目撃する方のスーをスー(B)とする。

スー(B)はスー(A)を目撃したあと、車道を渡って自分がいる歩道に向かってくるドリス(白いTシャツとジーンズのショート・パンツ姿)を目にする。スー(B)は走って逃れる。続いて、今度はスー(A)が木の陰に隠れているドリスを発見する。スー(A)は他の娼婦にドリスの存在を訴えるが相手にされない。そして、スー(A)もいずこかに走り去る。

問題はこれに続くシーンがポーランドに舞台を移し、ロスト・ガールに「催眠術」をかける娼婦のシーンを含んだシークエンスを挟んだあと、クラブの入り口で入場を訴えるスーのシーン(2:11:00)に戻ることだ。その前のシークエンスにおいて、スー(A)もスー(B)も、どこへどのように走り去ったか判然としない。つまり、クラブの入り口に現われた以降のスーが、スー(A)であるかスー(B)であるか、映像上の決定的な区別がないのだ。

この表現をどう受け取るか……それ以降のスーをスー(A)と受け取るかスー(B)と受け取るか、それとも(A)(B)の「総体」として受け取るのか、作品解釈上のポイントとして非常に面白いのだがそれはひとまず置く(今のところ、個人的にはスー(A)と理解するのが妥当なような気がする)。いずれにしても、これもリンチが意図的に仕掛けた「混乱」であるのは間違いない。もちろん、それがテーマ(あるいはモチーフ)に沿った「混乱」であることはいうまでもないわけだが。

上記のような点をみていくだけでも、この作品に対する「適当に撮った映像を適当につなげただけ」という評は不適切であることがわかる。基本となるフラグメントの撮影時期や撮影場所はバラバラであっても、それをひとつの「作品」として編集してまとめる時点で、リンチの意図が働いているのは明瞭だからだ。

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