フォト
2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 「インランド・エンパイア」を観た(3回目) (11) | トップページ | 「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (1) »

2007年9月18日 (火)

「インランド・エンパイア」を観た(3回目) (12)

ポモーナ(Pomona)についてのメモ。

デイヴィッド・リンチがこの地名を「インランド・エンパイア」の作中で使ったのは、まずはビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」(1950)からの引用としてであることは間違いない。自分の屋敷に入り込んできたジョー・ギリスが脚本家であることを知ったノーマ・デズモンドが、自ら脚本を執筆中であり女優としての復帰作となるはずの「サロメ」について滔々と説明するシーンがある。その内容の大時代ぶりにあきれたギリスが「ポモーナでだったら受けるかもしれない(They'll love it in Pomona)」と皮肉まじりに言うのに対し、デズモンドのほうは「どこでだって受けるわよ(They will love it every place)」とやり返すのだ。

そもそもポモーナという地名は、ローマ神話における「果実や果樹の女神」の名前に由来している。1870年代、町の境界線に一本のオレンジの木を植えるに際して、この名前がつけられたという話だ。いわゆるカリフォルニアの「インランド・エンパイア地区」が柑橘農業と酪農とワイン醸造の地であったように、ポモーナも農業を中心とした町であったことがわかる。その後、鉄道の開通や水路の開発などによって、インランド・エンパイア地区ではオレンジを中心とした柑橘農業が爆発的に盛んになった。また、戦前には、オンタリオ(Ontario)にGE社のアイロン(!)製造工場が出来たりしていた。

第二次大戦後、インランド・エンパイア地区はロスアンジェルス市のサバーブとして発達することになり、当然ながらポモナも同様の発展を遂げることになる。しかし、「サンセット大通り」のギリスの台詞から推し量るに、1950年当時のポモナはまだまだ「田舎」という扱いであったようだ。

インランド・エンパイア地区と呼ばれるのが基本的にリバーサイド・カウンティ(Riverside County)とサン・バーナーディノ・カウンティ(San Bernardino County)の各地であることを考えると、行政的にはロスアンジェルス・カウンティ(Los Angeles County)の東端に所属するポモーナが明確にインランド・エンパイア地区に含まれるかどうか、実はちょっと微妙なところがあったりするらしい。だが、ポモナがインランド・エンパイア地区から続くポモーナ・ヴァレー(Pomona Valley)の西端にあること、加えてポモナの西側にあるサン・ノゼ・ヒルズ(San Jose Hills)やプエンテ・ヒルズ(Puente Hills)の丘陵地帯がロスアンジェルス・カウンテイの他の地区との物理的・心理的バリアとなっているという地勢的な理由などもあって、ポモーナがインランド・エンパイア地区の西端とみなされる場合も多いみたいだ。

いってみれば、ロスアンジェルス(ひいてはハリウッド)とインランド・エンパイア地区の狭間にあるのがポモーナだということになる。この微妙な立ち位置まで意識してリンチがこの地名を使ったのかどうか、かなり興味深いところだ。「映画=ハリウッド」と「内面=インランド・エンパイア」の二つが接触する境界上に存在するポモーナが、もし「感情移入」や「同一化」の象徴として登場しているのだとしたら、そこに行くバスがある者には存在しある者には存在しないことは、まったく当然であるような気がしてくる。

そして、「膣壁に穴の開いた、猿を飼い金髪のカツラを被る、女性にも好かれるヤク中の友人(というハリウッド伝説のごった煮)」がそこに住んでいることも、また、当然なのかもしれない。

« 「インランド・エンパイア」を観た(3回目) (11) | トップページ | 「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (1) »

「インランド・エンパイア」を観た(3回目)」カテゴリの記事

インランド・エンパイア」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/215302/16481268

この記事へのトラックバック一覧です: 「インランド・エンパイア」を観た(3回目) (12):

« 「インランド・エンパイア」を観た(3回目) (11) | トップページ | 「インランド・エンパイア」を観た(X回目) (1) »

最近のトラックバック