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2007年7月11日 (水)

「Detour」の回り道

「Detour」(1945)というフィルム・ノワール作品がある。邦題は「恐怖の回り道」。

監督はドイツ脱出組のエドガー・G・ウルマー。ムルナウやラングと比べると、この人のハリウッドに渡ってからの一般的評価はあまり高くない。どうも世渡りが下手だったぽいところがあって、それでいい仕事にありつけなかったんじゃないかと勝手に想像してるのだけど、当たってるかどうかは知らない。「Detour」もそうした「いい仕事じゃない低予算Bピクチャー」の一本ではあるのだけど、ノワール好きからの評価が高いのはウルマーの演出によるところが大きいだろう。

ファム・ファタール役は、アン・サヴェイジという個人的に割と好きな女優さん。「Midnight Manhunt」 (1945)というノワール・コメディの女性記者役とか、たいした役じゃないんだけど非常におヨロシかった。実生活では、とっとと女優稼業に見切りをつけて資産家と結婚したまではよかったんだけど、夫と死別すると同時に破産し、老後はかなり苦労したようだ。

問題は主演のトム・ニールで、なんかもうこの人は私生活がメチャクチャ。女性をめぐってのいざこざで暴力事件を起こして仕事を干されたあげく、妻(三人目)を射殺したかどで刑務所入り、6年お勤めしたのちに釈放されたのはいいがその半年後に心臓麻痺で死亡……ってな文字どおり「ノワールな人生」である。

その暴力沙汰の相手というのが「幻の女」(1944)に出ていた、やっぱり俳優のフランショー・トーンだ。悪いことにニールは学生時代ボクシングをやっていたもんで、ドツき回されたトーンは鼻と頬骨を折るわ、脳震盪を起こすわで病院に担ぎ込まれる大騒ぎになったらしい。

ニールとトーンが争奪戦を繰り広げていた相手というのがバーバラ・ペイトンという女優さんなのだが、この人がまた強烈(笑)。

barbpayton

最初はジェイムズ・キャグニーやらゲーリー・クーパーやらグレゴリー・ペックやとの共演作品に出演し、順風満帆な感じだった。ところがこの人、とんでもなく男癖が悪かったようで、既婚のトップ・スターやプロデューサーを「つまみ食い」しまくったみたい。で、醜聞が広まるにつれ、次第に仕事にも差障りが出るようになる。

そんななかで、トム・ニールとフランショー・トーンとの暴力事件が起き、これで彼女の評判は決定的に地に落ちた……かというと、まだまだそんなもんじゃなかった。彼女の「地面」はもっと下だった。

すったもんだののち、ペイトンは怪我から回復したトーンと結婚する。かと思ったら、たった7週間で離婚。なんと今度はニールとくっつく。いったいナニがしたいんだ、アンタ……とみんなが思ったらしく、もう彼女には碌な役が回ってこなかった。「ゴリラの花嫁」(Bride of the Gorilla/1951)でゴリラにさらわれたりなんかしてるうちに、さすがに本人もヤになったらしく、心機一転、今度はイギリスの映画界で出直そうと海を渡る。

が、当然ながらイギリスでもうまくいくはずがなく、尻尾巻いてアメリカに帰った彼女には、もうどん底に至る道しか残っていかった。

1955年から1965年にかけて、バーバラ・ペイトンは何度も犯罪歴を残す。不渡り小切手を出して捕まる、公衆の面前で泥酔して捕まる、万引きで捕まる、麻薬所持で捕まる……そしてもちろん、売春で捕まる。もうこのころには美貌も衰え、体型も崩れ、客にぶん殴られて歯は欠け、最後はバス停のベンチで寝泊りするありさま。

以前、IMDbの掲示板で、1963年ごろのペイトンを目撃したという人の書き込みを読んだことがあった。職場の向かいの2階に彼女が住んでいて、客を引き込んでは窓あけっぱでお仕事してたのが丸見えだったらしい。

ついに67年、親族に引き取られてアルコール断ちを試みるもすでに手遅れ。同年5月、バスルームで倒れているところを発見され、心臓と肝臓の疾患で死去。享年39歳。なんかもう、ネガティヴな意味での「ハリウッド伝説」の典型例みたいな人だ。

ところで、バーバラ・ペイトンの最後の出演作となったのが、「Murder Is My Beat」(1955)というフィルム・ノワール作品。監督がなんとエドガー・G・ウルマーだったりするのが、これまたなんかの星の巡り合わせなのかどうか。この作品も観てみたいと思うのだけど、残念、北米ですらソフト化されていないのでありました。

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