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2007年6月30日 (土)

「ホテル・ルーム」のシナリオをば読む

hotelroomvhs

「ホテル・ルーム」(1993)は米HBOテレビのために作られたオリジナル・ドラマで、全3話のうち「トリック」と「停電」 の2話をデイヴィッド・リンチが監督している。シナリオは「ワイルド・アット・ハート」で原作者として初めてリンチと組んだバリー・ ギフォードで、二人はこのTVドラマの仕事をした後、「ロスト・ハイウェイ」のシナリオを共同執筆することになる。

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で、このTVドラマのシナリオ集である「Hotel Room Trilogy」という本が、ミシシッピー大学出版局から出ている。 もちろん、著者はバリー・ギフォード。ただし、リンチが監督しなかった「ロバートにさよなら」(監督はジェームズ・シグノレッリィ) は入っておらず、かわりにギフォード自身の短編小説をもとにした「カシフィ夫人(Mrs. Kashifi)」というオリジナル・ シナリオが収録されている。

ホテルの一室を住居にしているカシフィ夫人のところへ、30歳くらいの母親が8歳になる息子を連れてやってくる。 カシフィ夫人は占い師で、母親は先日亡くなった自分の母親、つまり息子の祖母があの世で幸せに暮らしているかどうか確かめにきたのだ。 母親と夫人が別室で紅茶占いをしているあいだ、息子のチャーリーは鳥かごに入った一匹のインコと取り残されることになる。すると、 そこに祖母の亡霊が現われ、彼に話しかけて……。

……という、いかにもギフォードらしい毛色の変わった幻想譚である。年代は1952年に設定されているようで、となると、 ちょうど1936年に設定された「停電」と1969年の「トリック」の間に起きた話ということになるはずだ。ただし、 もともとTVドラマ用のシナリオとして書かれたわけではないので、若干、他の話とフォーマットが違っている。 廊下と部屋だけでなくホテルのロビーも舞台として出てくるし、カシフィ夫人が住む部屋が603号室と明示されていない。部屋の構造も違う。 他のシナリオでは舞台となる都市がはっきりニュー・ヨークに設定されているのに対し、このシナリオでは「大都市」としか書かれていない等々、 番外編的なニュアンスが強い。

リンチが映像化していたらどんな感じになっただろうと思うのが、デ・ウィット氏という登場人物。 この男はカシフィ夫人と母親と息子の話には、直接にはからんでこない(間接的にはからんできて、 いろいろとこちらの想像力をかきたててくれる)。どうやら健忘症の気があるらしく、 フロントのホテルマンに自分が来たらその度に部屋番号を教えてくれと頼んだりしたあげく、 最後はなんともいえない登場の仕方をして話を締めくくってくれる。まあ、リンチの手にかかったら「カウボーイとフランス男」や「オン・ジ・ エアー」の登場人物たちのような、ベタな描かれ方になったとみるのが妥当なのかしらん。

ギフォードの前書きによると、この「カシフィ夫人」は彼が子供のころ、 奔放な母親と一緒に暮らしていたときに体験した話に基づいているらしい。「南部の夜三部作」など、この人の小説作品には南米文学を思わせる 「魔術的」な話が多いが、それらの作品群にも彼の実体験に基づいたものがあるのかどうか。

同じ前書きには、「ホテル・ルーム」の打ち合わせ時に、プロデューサーだったモンティ・ モンゴメリーとリンチがギフォードと交わしたという会話も披露されている。それによると、モンゴメリーとリンチには 「自分たちの祖母が観られるようなドラマを作りたい」という意向があったようだ。それに答えてギフォードいわく、「なにも問題はないな。 私がシナリオを書くから、あんたたちはお婆さんを縛りあげて猿轡をかませばいい」

……実行したかどうかは知りません(笑)。

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